1.20.2011

国や時代の枠組みを疑って芸能を観察する試み-3

様々な民俗芸能を繰り返し見ていると、いろいろ気がつくことがあります。いまのところ、神楽やお囃子をたくさん見ているんですが、一言で「神楽」や「お囃子」と言っても本当に多様で、まず、ある範囲の地域に、ある時代に伝わった独特のスタイルというものがある。
その地域の中でも、伝承している集合体(一つの集落や保存会といった組織)によってスタイルにも違いがある。さらに、その集合体が持っている演目ごとに、またスタイルが違っていて、演じ手個人の個性によってもスタイルが違う。その違いを発見するのがとても面白いです。
その違いの中から、芸能のジャンルを越えて新しい共通性が浮かび上がることがあって、私は、演じ手の表現しようとする体の動きや形と、その体が属していた社会的立場には、国、時代、ジャンルを越えて共通性や類型を発見できるんじゃないかと思ったりしています。
例えば、神や強い権力者は、体の縦の中心軸が垂直(傾かない)で、上半身と下半身の左右の方向が同じ(捻れない)場合が多いなぁ、とか。農民は、膝が緩んでいて腰の位置が低いなぁ、とか。武士や狩猟民は、胸や肩の緊張感が強いなぁ、とか。
いまの私たちの体はまったく違うけれども、過去の体の形を模倣してみると、何かその体の中に宿っていた心が、少しは想像できるような気もします。形には心が宿っているとしたら、形を残すことで心を残すことも、形を蘇らせることで心を蘇らせることも、できるのかもしれないなぁ、とか。
私は、とりわけ伝統文化の保存がやりたいと思っているわけではないのですが、現在進行形の舞台芸術にしても、形に心が宿るということが常に起きているわけで、有史以来の芸能の本質なんだろうなぁと思ったわけです。

3 件のコメント:

カムイ さんのコメント...

始めまして。ツイッター経由でこちらのページを知りました。カムイと申します。趣味で神楽の笛を吹いているものです。
日本の民俗芸能は多種多様で奥が深いですね。それを枠組みを疑って観察するというのは、面白い試みだと思います。残念ながら、今回の中間発表にはいけませんが、面白そうですね。
 今後とも、いろいろ勉強させてください。ヤフーで細々とブログやっておりますので、自己紹介代わりにサイト貼っておきます。よろしくお願いいたします。http://blogs.yahoo.co.jp/kamuiupopo

大澤寅雄 Torao Ohsawa さんのコメント...

カムイさん、コメントありがとうございます。こういう形でお知り合いになれるのはとても嬉しいです。
カムイさんのブログ、拝見させていただきました。とても興味深いです。私、花祭りは去年3月に布川という集落に観に行ったんですが、実は、11月の御園にも行く予定だったものの、当日、高熱が出てキャンセルしてしまったのです。なので様子をカムイさんのブログがよくわかって、ありがたかったです。
「変化していかないと伝承されないというのは、民俗芸能の宿命です」という言葉はすごく思い言葉で、これは逆に、伝承されている民俗芸能は、多かれ少なかれ変化し続けてきたものだ、とも言えるような気もします。その形の中に、できるだけ変化していないものを発見したいなぁとも思います。
カムイさんのブログにも、またコメントさせていただきますね。

カムイ さんのコメント...

ブログ見ていただきありがとうございます。本来は、巫女神楽が専門なのですが、最近は花祭に掛かりきりになってしまいました。御園は去年が2回目の訪問で、改めて今のうちに少しでも見ておかないと、という気持ちになり、動画をアップすることにしました。
 僕自身、学者然とした記述は出来ないのと、やはり笛吹きの性分から「実際どうやって演奏するの?」とか「どういう気分で舞っているの?」という実際的な部分に興味があります。なので、ブログはかなり直感的に書いた記事になっています。楽しんでいただけたら幸いですが、間違った記述などありましたらご指摘ください。多くの民俗芸能は危機的状況にありますが、こうして興味を持ってくださる方と知り合えるのが本当にうれしく、力強いです。

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