先週の水曜にパートナーの手塚夏子が突然思い立ち、木曜に決断して、金曜の夜行バスに乗って宮崎県の高千穂まで夜神楽を家族3人で観に行きました。去年から手塚夏子が始めた民俗芸能のリサーチの一環ということで行ったのですが、行って本当に良かったです。
高千穂神楽の起源については、「はっきりした文献では正和二年、西暦1313年といいますから、いまからおよそ700年の昔に、この高千穂で神楽が行われていたことを示すものが残されております」とホームページの解説に書かれています。ひと言で700年前と言ってもピンとこないですが、とにかくずーっとずーっと、この地域で、五穀豊穣を祈って歌ったり踊ったりしてきたわけです。
しかしおそらく、700年間ずっと同じ形だったわけではなかったと思います。変化の要因のひとつに、国家の関与というものが挙げられます。私が知る範囲で大きいのは、明治維新の際の神仏分離令によって、国内の多くの神社や寺で行われてきた神事祭礼での芸能は大きく変わったと聞きます。具体的には、それまで神官自身が舞や音楽を執り行って来たものを国家が禁止したことで、多くの神楽が失われたと同時に、神官ではなく民間人が受け継いでいくことで残った神楽もあった。それは、神事として「秘伝」だったものが、結果的に芸能として人々に開かれることにもなったわけです。
もう一つの国家の関与は、「重要無形民俗文化財」として国が指定したこと。これによって高千穂神楽は、小さな地域の小さな祭りだけでなく、国が認めた文化財になった。それは観光資源として大きな価値を持つことになり、高千穂神楽も「観光神楽」というものを始めました。そこで、本来は年に1度、夜通しかけて行う神事の色合いの濃いものが、観光客が喜ぶ内容を、年中無休で、短縮して上演するようになった。しかし、高千穂神楽を受け継ぐ人々の中には、これではマズイ、ずっと受け継いできたものが変化してしまうと危惧して、地域に根差した夜神楽を大事に継承しようとする動きが改めておきたそうです。
国家の関与によって危機に直面した面もあり、逆に言うと、その危機を克服してより地域に根差したとも言えます。その一方で、私が強く感じたのは、国家が関与しようとしまいと、地域の人々が支えてきたことに変わりはなかったということです。一昨日の夜神楽の会場は、普通の民家の広間と庭を開放した「神楽宿」と呼ばれる場所で行われ、その広間の壁には、ずらーっと「御神前」「寸志」など書かれた祝儀袋が貼り付けられていました。地域の人々だけでなく、遠方の方からのものもありました。
日本では昔から、こうして地域の人々が、直接お金を出し合って、場を作り、継承する人を育てて、文化を残してきたわけです。国の関与があろうとなかろうと。
2 件のコメント:
TORAOさま、ご無沙汰しております。「日本では昔から、こうして文化を残してきた」と言うエントリ、まったくおおせの通りだと思います。
さて、貴エントリからは少々外れる話で恐縮ですが、某劇場フォローピンルームのワイヤ入りガラスの熱割れに関して、当該施設設置者である××市の議会一般質問で取り上げられたようです。市執行部の答弁では、改修計画に基づいて順次必要な改修を行なうということのようです。
通常のライフサイクルを考慮し計画通りの改修は論を待たないところ、防火設備(ワイヤ入りガラスは防火地区を遮断する目的で開口部に設置される防火設備)の破損や不具合は、改修計画とは別次元の話のように思います。また客席の上部に位置しているガラス窓が割れているということも気にかかります。
ピンルームにワイヤ入りガラスが使われている他の劇場で、熱割れの発生事例はないのか、気にかかります。
即ち、ピンルームに防火上(消防法上)「ワイヤ入りガラス」が使われている例は他にもあると。
消防法によれば、防火区域が分かれている場合、他地区への延焼を一時防ぐ(非難時間を稼ぐ)ため、ワイヤガラスの使用が義務付けられているとのこと。
一方、実際の建物使用では、ピンルームと言うこともあり、ピン使用時(司会者や歌手など対象位置が固定される場合には)相当な熱線が長時間特定部位に照射されます。このことからワイヤ入りガラスの熱割れが起こる可能性が高いことは容易に予想できるようにも思います。
何方か(業界の方で)ピン・照明装置の照射等によるワイヤガラスの“熱割れ”の事例があればご報告いただけないでしょうか?。
endouさん、コメントありがとうございます。
さて、某劇場のフォローピンルームのワイヤ入りガラスの熱割れについてですが、私は劇場設計や舞台技術の専門ではないもので、なんとも分からないですね。
こういう問題は日本照明家協会とかに問い合わせるといいんでしょうかね。あるいは劇場演出空間技術協会とか。
http://www.ldeaj.or.jp/
http://www.jatet.or.jp/
お力になれなくてすみません。。。
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