花祭りのことを知ったのは、ミュージシャンで、最近神楽の著書を発行された三上敏視さんがVJを務める「神楽ジョッキー」でした。全国各地の神楽を収めたビデオを見せてくれるイベントに手塚夏子と参加して、それ以来、神楽にハマってしまいました。
新幹線で豊橋に、それからJR飯田線に延々と揺られて東栄駅、バスを乗り継いで「布川」という集落に。東栄町は人口四千人くらいの町で、布川は二十数世帯しかない本当に小さな集落。そこで、土曜日の午後から日曜の午前まで、花祭りが行われました。三上さんも東京から来てたし、福岡から来た人もいましたが、さほど観光化している祭りではないので、参加しているのは地域の人たちが中心。祭りを執り行うのも、その集落の住民がやります。
明るいうちは神事の色合いが濃く、日が暮れると若衆や年寄りや子どもが夜通しで舞い踊ります。舞いは、とってもシンプルで、技巧的に華やかな踊りというわけではありません。基本的には短いフレーズが何度も繰り返されるだけです。が、腰を低くして回転したり、飛び跳ねたりするのを40分くらい続けていると、舞手は相当しんどい状態になります。それを見る側も、手に汗を握る感じです。
音楽は太鼓と笛と、民謡が入るときもあります。複数の吹き手で笛を吹かれると、音程のズレが生じます。このピッチのズレを修正するような意図もなく、聞いているうちに音程にズレがあることが不快とは思わない。西洋音楽的な調和した音楽ではなく、むしろ不調和そのものが豊かな響きに聞こえるから不思議です。
そういう舞と踊りを、日が暮れてから夜が明けるまで、延々と続くわけですが、酒を飲む、眠くなってくる、焚き火の煙が入ってくる、という環境の中だと、ちょっとしたトランス状態です。見ているだけでもトランスに近づくわけですから、舞手や演奏する人は、相当トランスすると思います。
盛り上がるのは深夜、大きな鬼の面を着けた3人が登場する場面で、その直前の雰囲気は、独特です。本当に子どもからお年寄りまで、鬼が出て来るのを待ち遠しそうに、ワクワクしている。鬼が出てきて、鉞(まさかり)を振り回しながら踊ったり、別の登場シーンでは、問答をする。その状況をみんな嬉しそうに見ている。こんなに鬼が愛されているということが、不思議。たしか鬼って、人から嫌われる存在じゃなかったっけ?
そしてクライマックスは、夜が明けてからの「湯かけ」。4人の少年(たぶん中学生か高校生)が、藁の束を両手に持って、中央で湯を沸かしているカマドの周りを回って踊ります。踊りが最高潮になったときに、4人が一斉に藁の束を湯に浸けて、その湯をその場いる人に向かって荒々しく振りかけます。それまでのトランスした状態に加えて、立ちこめる湯気、奇声、歓声、笑い声。子どもからお年寄りまで、男も女も関係なく、少年たちが振り回す藁から、大量の湯のしずくを浴びます。エネルギーの大放出。
やっぱり、花祭りはすごかった。体験できてよかった。
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3 件のコメント:
すごいよさそうですね。僕は,桃太郎で鬼を演じているわけですが,こんな感じでやりたいのです。儀礼やお祭りとアートの関係は常に気になるところです。そして、湯気!この間「湯気ダンス」というワークショップをしたんですが,湯気や靄や霧のように踊りたいと常々思っているのです。ああ!いいことを教えてくれて感謝です。
さくまさん、コメントありがとうございます。
そうだ、ぜひ今度、さくまさんも一緒に神楽を見に行きましょう。あと、インドネシアのまつりにも、ぜひ連れてってください。マジで。
はいはい、ぜひ行きましょう。
日本の祭りもインドネシアの祭りも。
3月16日は,バリでは、ニュピといって丸1日なにも音を出してはいけない日です。飛行機も飛びません。
その前日は,大騒ぎです。
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