4.14.2009

アートと福祉・教育

作曲家の野村誠さんのブログに、興味深い文章がありました。大まかに言えば、福祉や教育にアートが関わる現場で、よく論議や批判の対象になるポイントを簡潔に紹介してくれています。文章の後半を引用させてもらいます。
で、ですね、そういうアートと福祉・教育の2つを対立させても、全然意味がないと、ぼくは思う。それは、立ち位置の違いです。第1に何に重きを置くかは違っても、相互に目指しているところは、意外に似た方向で、シェアできる部分が多いことの方が多いのです。
両者を対立させるのではなく、結びつけ、相互作用が起きる環境づくりをすること。それがいいと思います。そのために吉野さんのようなコーディネーターの仕事が重要になったりもする。
それから作品の質を論じることよりも、作品の個性、独自性、特色を論じる方がいいと思います。

さすが野村さんだなぁと思いました。「両者を結びつけ・・・コーディネーターの仕事が重要になったりもする」というのは、まったくそうだと思います。あと、私なりの見方を書きます。例えば、「アートとしての価値が高い・低い」という軸が水平方向にあって、「福祉(あるいは教育)としての意義が大きい・小さい」という軸が垂直にあるとしたら、一つの考え方としては、x軸もy軸もプラス(右上)の方向を目指せばいいのかもしれません。
ところが、「何をもってアートの価値を測るのか」「何をもって福祉(教育)の意義とするのか」という、軸の左右や上下というものは、実際にはとても曖昧で、個々人によって幅があったり違っていたりします。また、アートの面白い(厄介でもある)ところは、そうした社会的な価値や意義を反転させたり歪ませたりすることがあるわけです。
2006年のエイブルアート・オンステージでの「音の公園」。あのパフォーマンスをどう捉えるのか。すべての人が同じ答えではないにしても、私には、最高の賛辞を贈りたいパフォーマンスでした。アートの価値や福祉の意義を歪ませる力がありました。
私は、x軸(芸術的価値)とy軸(社会的意義)が硬直している社会は、危機的な状況だと思うんです。その硬直した縦横の軸を揺さぶりながら、何かを守ったり変えたりする(もちろん、守ることも大事だと思っています)。そういうことが、アートと福祉、アートと教育を考えるときに大事な気がします。

4 件のコメント:

KANA さんのコメント...

はじめまして、気になる記事読ませていただきました。福祉とアート、地域と文化を考えて主に福井県で活動していこうと気長に勉強中です。

大澤寅雄 Torao Ohsawa さんのコメント...

KANAさん、コメントありがとうございました。
こうして過去のブログにコメントをいただいて、また自分の書いた文章を読み直すきっかけにもなり、大変有り難いコメントでした。
このエントリーを書いてから、ほぼ一年経ちますが、ちょうど先日「音遊びの会」のライブを体験して、改めてここで書いたことの意味を考え直すきっかけになりました。
ぜひKANAさんのお考えも、もしよかったら教えてください。

KANA さんのコメント...

Ohsawaさん、さっそくのお返事ありがとうございます。
 「アートと福祉・教育の2つを対立させても、全然意味がない」「x軸もy軸もプラス(右上)の方向を目指せばいい」その通りだと思い、つい感動して通りすがりにコメントを書いてしまいました。
 私のことを書かせていただくと、私は美大で映画を専攻してい今卒業したばかりで、アートマネジメントの専門についても福祉についても学んだわけではありません。いちアートファンであり、たまたま福祉が身近にあっただけです。ただ、プロ/アマという対立を気にすることなくアートは出来るものだと思っています。健常者/障害者の境界が曖昧なのも同様だと思います。わたしはその中間でいろいろなものをつなげていく役割がしたいと思っています。
 それから、「音遊び会」のHPを見させていただきました。映画が公開されるのですね、是非みたいです。
 私は以前ボランティアで障害者の方と何かを作って発表をするということをしたことがありますが、「作品として高めること」はむずかしいというがサポート側からの意見ではないかと思います。しかし、どんな形であれ、出来上がるもの、場、パフォーマンス、ハプニングがあり、そこには様々なコミュニケーションが生まれます。それ全体をアートとしてとらえるとしたらとんでもないものに私は出くわしてしまったのではないかと思っています。
 「うまくいかない」と思うことは多いです。しかし、ねむの木学園の宮城まり子さんが言った言葉「福祉は文化である」に勇気づけられます。アートも文化です。双方が近づくことで可能性がもっと広がるのだと私は信じています。
 長々と失礼しました。まだまだ勉強中です。また参考にブログ拝見させていただきます。  
kana Higashino

大澤寅雄 Torao Ohsawa さんのコメント...

KANAさん、ありがとうございます。こういうコメントをもらうと、ブログを書いててよかったなぁと思います。
これから公開される「音遊びの会」の映画は、すごく面白そうですよ。私が今まで見た映画で言うと、「すべての些細な事柄」も興味深いドキュメンタリーで、私は監督の眼差しに惹かれました。あと、私自身は先日、こんなコンサートの企画に関わりました。
ぜひ、KANAさんの今後の活躍に期待しております。

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