生物と文化の多様性にこだわりはじめたのは最近ですが、前にも農業と文化の類似性に思いを巡らしたりしました。それ以前には、植物の成長過程に地域文化の発展プロセスを例えたりしていました。
それは、土地を耕し(劇場やホールなどのインフラの整備)、種を蒔き(参加機会の提供)、苗を育てて(人材の育成)、花が咲き(鑑賞機会の提供)、実らせる(創造と情報発信発信)、というイメージでした。
長い間、私の中ではこのイメージを持ち続けていたのですが、最近、大きく抜け落ちていたプロセスに気がついたのです。それは「根を下ろす」ということです。
もちろん、根を下ろしているから発芽も開花も可能ではあるのですが、根が浅い植物は枯れやすいでしょうし、5年、10年、50年さきも花を咲かせたり実らせたりするためには、根がしっかりと下りていなければならないわけです。
地域文化を見ても、アーティストひとり一人を見ても、同じことが言えると思うのです。立派な花が咲いている地域もあるし、豊かに実っている地域もあります。ただ、そうした地域に、しっかりとした根が下りているかというと、必ずしもそうじゃないと思うのです。
難しいのは、外からは根が見えないということです。花が咲かなくても、実らなくても、根がしっかりと下りていれば、次の年には花が咲くかもしれないし実りがあるかもしれない。それなのに、根を枯らしてしまうことがあるかもしれない。逆に、花も実もつけない植物を大事に見守ることで、しっかりと根を下ろし、ある時から花を咲かせることがあるかもしれない。
その根の状態を見極めるのが、文化行政やアートマネジメントにとって、とても大事な仕事なんだと思います。それはきっと、花や実を管理するよりも難しいことでしょう。
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