私は、そこで日本文化芸術振興会に提案したいのが「地域版アーツカウンシルへの再助成制度(リグラント)」の明記です。プログラムディレクター(PD)やプログラムオフィサー(PO)が全国津々浦々、ベテランから若手まですべての公演を見るわけにはいかない。「POの下に調査員を配置し」て見たとしても、現地の文化環境を理解しないで、中央の価値観や物差しで審査や評価を行うのは、文化の生態系を歪ませることになります。
地域版アーツカウンシルは、その地域の文化芸術団体や芸術家の合意のもとに自ら立ち上げるものであって、政府から民間に、あるいは中央から地方に「作れ」と命じるものではないと思います。が、せめて、国が整備するアーツカウンシルは、今後、立ち上がる可能性のある地域版アーツカウンシルへの再助成の仕組みを整えておく。そして、その地域で活動する文化芸術機関が地域版アーツカウンシルとなり、国のアーツカウンシルは、そこに最適な助成金の分配を委ねればいいと思うのです。
もう一つ、再助成を求める理由は、表現における政治的な介入の問題です。本来、日本文化芸術振興会の助成にしても、アームズ・レングスの法則が尊重されるべきだと思いますが、映画「靖国」に対する日本芸術文化振興会による助成金について問題になったことは、芸術文化振興基金そのものがアームズ・レングスの上に成立していない、ということの実態が表面化しているわけです。でも、その芸術文化振興基金が国のアーツカウンシルを担うということが前提で話を進めるのであれば、せめて再助成制度をしっかり整備することが必要だと思うのです。
2007年6月に発表された(社)企業メセナ協議会の「日本の芸術文化振興について、10 の提言」の中にも、以下のような提言があります。
政策規模や財政状況によって専門職の配置が困難な場合は、少なくとも、専門家を擁する民間の芸術文化機関との連携することによって“専門家機能”を持つことができる。民間の専門組織との連携は、継続的かつ専門的な文化政策の推進を可能とする。たとえば、直接助成金を配分しにくい国・地方自治体の助成金制度においては、そうした連携によって、各分野の現場の課題を最もよく把握する専門機関を通じた助成金の再配分(リグラント)が可能となり、より高度に専門的できめ細やかな助成が可能となる。また、助成主体と被助成者の間にアームズ・レングス(一定の距離)が保たれ、政治的な中立も保証されることになる。そんなわけで、再助成制度を要望してはどうでしょう。
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