10.26.2010

文化勲章受章者の出発地点

演出家の蜷川幸雄さんが、文化勲章を受章されたというニュースを読んで、こんなことを思いました。
現在の蜷川さんは彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督を務められていて、もし劇場法(仮称)が成立したら、間違いなくさいたま芸術劇場は国から劇場として認定されるでしょう。それはそれで、いいんじゃないか。「それは許せない」という見方があるかもしれないけど、それで芝居を観たことのない人が観てくれたり、世の中の芝居に対する認識が変わってくれれば、それもいいんじゃないか、という気がするんです。
でも、私が期待したいのは、若かりし頃の蜷川幸雄の、演出家としての出発地点であり、いま存在しないアートシアター新宿文化のような劇場が、今の時代に存在できること。あの劇場がなければ、文化勲章受賞者の蜷川幸雄はいなかったはずだし、あの劇場は、国が関与したり法で認定するような場所では決してないでしょう。そこで、思う存分、国家権力や消費社会やマスコミを批判する芝居をやればいいんじゃないかと。
中世で「無縁所」と呼ばれていた場所は、きっとそういう場所なんじゃないかと思うんです。

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