10.25.2010

劇場法(仮称)と別の方法も考えよう

久しぶりに書いた劇場法(仮称)のことで、twitterでいろいろと意見が見えてきて嬉しかったです。もっと意見があってもいいなぁとも思います。
twitterで京都橘大学の小暮先生が、劇場法に反対されている理由を簡潔に書かれています。今年3月に滋賀県の栗東芸術文化会館さきらでアーツマネジメント講座で「劇場法(仮称)を考える」というプログラムに呼んでいただいて、そのあと飲みながら小暮先生が劇場法(仮称)について率直な意見を聞いたときに、小暮先生が言われることは、たしかにそうかもなぁと思いました。
が、それでも「とりあえず賛成」という言い方をしてしまう理由を、とりあえず書きます。
日本全国に2,000を越える公立文化施設を、私は「文化資源」と考えていいと思いますが、その資源の価値が活かされていないのがほとんどだと思います。資源の価値を活かせなくなっている一つの理由は、漠然とした文化に対する理解の無さだけじゃなくて、地方自治法の「公の施設」に対する考え方(根本的には「公」自体に対する考え方)だと思うし、それに輪をかけて、指定管理者制度が始まったことだと思います(指定管理者制度も悪い面ばかりじゃないとも思う)。
また、20世紀末以降に設置された高度な舞台技術を持つ文化施設は、既に大規模な改修が必要な時期に入っていて、管理運営経費だけでなく、大規模改修に必要なコストが地方公共団体にとって大きな負担になる。地方公共団体によっては、あまりに大きいその負担(場合によっちゃあもう1つホール作れるくらいかも)を理由に、民間への売却、あるいは閉館という話も出てくると思うのです。それは、せっかくの資源があまりにももったいないじゃないかと。
いや、全然もったいなくないよ、という意見もあるかもしれませんけどね。まぁでも、建設事業に数十億円とか百億円を越える税金を投入しておいて、数千万円とか数億円とか十数億円とか指定管理料を毎年投入して管理運営してきたわけですしね。それをもったいなくないと言えるほど、裕福な地方公共団体はいないと思うのです。
なので、そのまま何もせずに放っておいたら、地方公共団体の議会や行政が財政健全化を理由に公立文化施設を安易に手放す状況を、もしかしたら、劇場法(仮称)が救いになるのかもしれない、と。
ただ、これもあまり大きな期待はしていないのです。何故かというと、今年度の「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」を見た時に、ああ、これは私が期待していた劇場や音楽堂ではないなぁと。セゾン文化財団とこまばアゴラ劇場で実施されている「創造型劇場の芸術監督・プロデューサーのための基礎講座」を受講されている皆さんは、優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」を見て、どう思います?将来、創造型劇場の芸術監督・プロデューサーを目指す方が「優れた劇場・音楽堂」の姿を変えるのかもしれませんが、私は結局、地方公共団体の文化政策に対する意識が変わらないと、劇場・音楽堂の姿もそんなに変わらないと思うんです。
なので、上記のような問題を改善するために、劇場法(仮称)とは別の方法を考えてみました。
地方公共団体が、本来の公立文化施設の設置目的を遂行する意志も力もない場合に、その施設を行政財産から普通財産に移行し、民間非営利組織に無償で譲渡し、固定資産税を免除する。民間非営利組織に対する寄付も免税。ただし、民間非営利組織には、官僚の天下りも議員もいないこと、市民に対する情報公開を積極的に行うことと。
劇場やホールを、中世の「無縁所」「公界所」のような場所にする、というイメージだと、こういう仕組みになるんじゃないかなぁ。

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