高校を卒業してから22年になるのに、今でも、宮本先生が夢によく出てきます。
現役の吹奏楽部時代、私は、そんなに叱られた回数は多くないと思うんですが、夢に出てくる宮本先生は、たいがい、私を叱っている。「あほ!もっさいなぁ、大澤!」宮本先生の怒った顔を思い起こすと、今でも恐いです。
怒ると恐い宮本先生でしたが、普段は、とても明るくて、とても楽しい人でした。そうそう、宮本先生は暗い音楽や楽しくない音楽は大嫌いでした。「なんじゃこの演奏は、暗いのお。もっさい!」「音楽はやらされてやるもんとちゃう。楽しんでやるもんや!」と。コンクールという「勝つか負けるか」みたいな仕組みの中でも、宮本先生は、楽しんで音楽をやることを最優先しながら、かつ、厳しく指導してくれました。厳しかったけど、本当に楽しかった。全員が楽しんで、いい音が出せたときは、必ず「エエぞエエぞ、ゴキゲンや!」と喜んでくれました。
気分がいいときは、練習のあとに「よっしゃ、サッカーやろ!」といって、部員全員がグランドに出てサッカーをしました。私が高校3年の定期演奏会の直前に、そのサッカーの途中で宮本先生が転倒して、手首か腕の骨にヒビが入ったことがありました。本番の指揮棒を握れるか危ぶまれたのが、何とか本番も指揮をしてくれることになった。その、本番直前の楽屋で、宮本先生は、怪我のためにシャツの袖口に付けるカフスボタンを付けられなくて、「大澤、カフスを付けてくれへんか」と言われました。私はその時、宮本先生のカフスボタンを付けるということが、妙に神聖な仕事を授かったような気がして、今でもその瞬間が忘れられません。そのくらい、宮本先生に対する尊敬とか畏怖を感じていたと思います。
高校3年のときに目標としていたコンクールの成績を残すことができ、私は、卒業してから吹奏楽を離れました。高校時代の自分の演奏を聴くことも、ビデオを観ることもしなかったんです。で、昨日の夜、ずっと観てなかったDVDを観ました。自分で言うのもなんですが、素晴らしい演奏でした。圧倒的に、楽しい。上手いのかというと、上手いやつもいれば、上手くないけど一生懸命やっているやつもいる。とにかく全員で音楽をやっている。そうそう、「洛南サウンド」は、そういう音でした。
なんかね、昨日から、ずーっとぼーっとしているんです。
宮本先生が亡くなられたということが、私の中で、よく分からないのです。
私の夢の中に、宮本先生が出てくるときは、たいがい、人生を楽しく一生懸命に生きられていないときなんですね。そういうとき「あほ!もっさいなぁ、大澤!」と叱ってくれるじゃないですか、先生。これからも夢に出てきて、叱ってくださいよ。たまには「ゴキゲンやのう、大澤!」と誉めてくださいよ。
4 件のコメント:
ご無沙汰しております。大澤先輩に導かれてわからぬままに京都に通いました。先輩に感謝です。
私も夢を見ます。私も今朝数年ぶりにCDを聞きました。
寂しいですね
大原、久しぶりやな。元気か?
3年間、あんなに夢中になって1つのことしかしなかったのが、今となっては信じられへんよなぁ。
宮本先生と仲間がいなかったら、絶対できひんかったやろなぁ。
大原は部長までやってたもんなぁ。ようやったなぁ。
なんかね、まだ、よう分からんのや。今日、これからお別れに行くというのに、先生に会いに行っても、先生がこの世にいないということが、よう分からんのや。
分からんまま、先生はどっかで生きている、ということにしといたらアカンのやろか。
ありがとうございます!。元気ですよ。先輩もブログを見ていると大学時代におっしゃってた仕事でがんばっておられますね。
さすがですね。
一報をもらって仲間に連絡をとって、それからどうしたらよいものかと。わからぬままに先生の情報を探していて先輩を偶然見つけました。
私もよくわからないのです。先生と仲間でやってきたことが消えて無くなってしまったようで。だからやってきたことの確認を一昨晩してたのかもしれません。
消えてしまう怖さは恐ろしいです。夢に出てくる先生はよく叱ってましたよ。私はよく叱られましたから(笑)
でもそのあと思い出すのは、37年間の中で唯一「悔い無し」と思えた、三年生の8月関西、演奏が終わって緞帳がおりてステージ上の先生の笑顔と、かっこ悪いですがみなが涙を流した瞬間です。
これが夢のように感じてしまいました。
会いたくて、会いにいけなくて。ほめられたくて、叱られるのが怖くて。どっかでお別れするときがあるかなと、いつも心の中にあったのだと思います。
今思えばどれだけ大きくあたたかい存在だったのか・・・。
これからは記憶の中に・・・、という言葉はよういいません。
「どっかでいきてはる!」に一票!
大原へ
昨日、お別れに行ってきました。お葬式というのは、よくできたもので、「どっかでいきてはる」という期待を、十分に消してくれました。私の一票は撤回。
ずいぶん泣いたなぁ。けど、たぶん、その方が、宮本先生もゆっくり休んでくれるんやないか、と。
ほめられたくて、叱られるのが怖くて、という気持ち、分かるなぁ。でも、もう叱られへんよ。これからは夢の中で叱ってくれるぶんには、ありがたいと思わなアカンな。
どっかでいきてはる、としたら、ありきたりやけど、心の中なんやろな。心の中の宮本先生を、大事にせんとな。
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