文化庁の助成プログラムの制度設計の、助成金の支援金額に関するルール、つまり「赤字補填」のあり方について、もう少し補足説明をします。例えば、日本オペラ団体連盟が助成の交付を受けていた平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業《舞台芸術共同制作公演》を例にとると、その募集要項に、助成による「支援金の額」は、こう書いてあります(PDFデータの3頁の最上段)。
支援金の額は,原則として,支援対象経費の2分の1以内,かつ自己負担金の範囲内とします。次に、公演計画申請書の様式の収支予算積算内訳(PDFデータの9頁)を見ると、収入の区分には、「入場料収入」と、その他の収入として「共催者負担金」「補助金・助成金」「寄付金・協賛金」「プログラム・図録等売上収入」「広告料・その他収入」があって、そこまでの小計と別項目に、「自己負担金」という枠があります。
また,支援金の額は文化庁の当該事業予算の範囲内で算定されますので,不足額すべてを満たすとは限りません。
おそらく多くの人は、入場料収入で赤字が出るのであれば、入場料収入以外の資金調達努力をするべきだと考えるでしょうが、文化庁の制度設計では、入場料収入だけでなく、申請した事業に対する寄付や協賛、広告料収入、物品販売収入、他の助成金や補助金申請といった、様々な資金調達をもってしても賄えない「赤字」が「自己負担金」と言っています。ですから、いくら資金調達努力をしたところで「自己負担金」を埋める手立てにならない。言い換えれば「自己負担金」とは、実質的に「身銭を削って出すお金」だということです(例えば団体の会費収入も、多くの場合、団員や団員の近親者である会員の身銭を集めていると思えば、身銭と同じです)。
年度は違いますが、今年度の文化庁予算の概要を見ると、「優れた芸術活動への重点的支援」と言う事業に49億7千800万円が計上されています。この金額すべてが助成金の交付金額ではないかもしれませんが、概ね50億円程度の「国民の税金」による芸術活動への助成金があるとしたら、日本の芸術団体や芸術家は年間50億円程度を「自らの身銭」を削って芸術活動をやっている、と言い換えてもいいんじゃないかと思います。
なので、文化庁の助成に関して言えば、不正受給をしたお金で車や家や土地を買うなんてことは、まず考えられない。助成金をもらわなかったら、誰かが車か家か土地を売らなきゃならないところを、助成金が受けられれば何とか生活費を削って芸術活動に注ぎ込むことで、やっと継続できる、という状態だと思います。
そんな制度の下で持続可能な芸術活動ができるわけがない、と私は思います。
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