7.28.2010

「自己負担金の範囲内」が一つの要因だと思う

日本オペラ連盟の問題の要因を、私なりに整理してメモしてみます。言うまでもなく、あくまで個人の見解であり、いかなる団体の考え方を代表するものでもありません。
要因の一つは、これまでの芸術団体側から声が上がっていた「赤字補填」としての助成の制度設計であり、具体的には、支援対象経費の2分の1以内、かつ自己負担金の範囲内という「支援金の額」のルールが、助成申請者に赤字負担を強いている仕掛けとなって、それ自体が不正行為を誘発しているということだ思います。
これについて、文化庁の助成制度の多くが同じ制度ですが、例えば「芸術団体人材育成支援事業」では支援金の額に2つのカテゴリーにルールがあり、「伝統芸能等人材確保」に関しては「支援金の額は、支援対象経費を予算の範囲内で支援します」というもので、もう1つの「人材育成・普及活動」の上記ルールと違っています。
また、自治体レベルの助成プログラムを例に出すと、東京都芸術文化発信事業では以前までは文化庁と同じ考え方でしたが、平成20年度から「自己資金の範囲内」の条項を撤廃し、助成対象経費の2分の1以内で、200万円を限度(国際共同制作は400万円)としました。
横浜市先駆的芸術文化活動でも、100万円を上限に事業実施経費の一部に対して助成金を交付するもので「自己負担金の範囲内」という制約はありません。
セゾン文化財団やアサヒビール芸術文化財団をはじめとした民間の助成財団は、言うまでもなく「自己負担金の範囲内」という条件はありません。
私は、常々この「自己負担金の範囲内」という考え方は、何を根拠にしてそうなったのか疑問でした。アメリカのNEA助成のようにマッチング・グラントであれば、基本的に「同額以上を他から資金調達すること」ですから、寄付や協賛などの資金調達努力を促すインセンティブになるわけですが、「自己負担金の範囲内」という考え方は、いかに資金調達努力をしても赤字が予算計上されなければ助成を受けられないので、結果的に「事業費を大きく見せかける」、つまり不正を誘発する方向にインセンティブが働くわけです。
私が「自己負担金の範囲内」に強く反発するのは、その根本の考え方に「芸術活動は結局、好きな人が趣味や余暇活動やボランティアでやっているわけだから、自分の身銭を切ってやって当然でしょ」という声が見え隠れして、まりで芸術活動を行う人へのリスペクトを感じないのですよ。

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