7.22.2010

パブコメ、出しました

文化庁の文化政策部会の「審議経過報告」への意見募集が、明日までとなっています。
意見は一つでも多い方がいいと思います。あと、「審議経過報告」に対して批評的、批判的な意見の書き方になってしまいがちなんですが、賛同する部分は「賛同する」と書いた方がいいでしょうね。おそらく、パブコメを集約する立場に立ってみると、まずは意見の数が大事で、その次に「賛同しているかどうか」が問題ではないかと。なので、細かい論点や記述内容が「具体的ではない」といった批判があるよりも、趣旨に賛同したうえで、細かい部分の建設的な提案がある方が、施策を前向きに進めるエネルギーになるんじゃないかと思います。もちろん、趣旨そのものに異論があれば、異論があるとハッキリ書くべきだと思いますが。
私も急いで出しました。こんな内容です。

●第1 文化振興の基本理念【2頁】
最後の段落「『鉄は国家なり』とは…」以下の文章で、「文化芸術の振興と連動する創造産業の発展に大きな期待」とある。そうした成長戦略としての文化芸術の振興とあわせて、アートを介して若者、障がい者、高齢者、貧困者、失業者などの社会参加や社会的包摂など、「最小不幸の社会」を実現するための、社会保障としての文化芸術の振興にも言及すべきではないか。

●第2 1(1)【3頁】「新しい公共」による文化芸術活動の支援について
「NPO法人等「新しい公共」による文化芸術活動を支援する。」とある。この趣旨に大いに賛同すると同時に、非営利であるが故の脆弱な財政基盤や不安定な雇用環境など、NPOの特性や現状課題に則した支援のあり方を検討されたい。

●第2 1(1)【3頁】日本版アーツカウンシル(仮称)について
「日本版アーツカウンシル(仮称)」の導入に向けて、早急の検討を望む。その際、専門的な審査・評価等の機能を国家の一極に集中せず、文化政策における地域主権を誘導することが必要である。また、行政主導ではなくNPOなど民間主導のあり方について、検討の必要がある。

●第2 1(2)【4頁】人材の育成・活用について
「文化芸術活動や施設の運営を支える専門的人材の育成・活用に関する支援を充実する。」とあるが、現在、人材の育成・活用を目的としたセミナー、シンポジウム、研修等の機会の充実に対して、専門的人材の雇用の受け皿が圧倒的に少ないと感じている。必要なのは文化芸術活動や施設における雇用機会の創出、雇用の促進、専門的人材のキャリアパスの道筋を示すことが、急務である。

●第2 1(2)【4頁】大学等の関係機関との連携について
「文化芸術の振興に当たり,大学等の関係機関との連携を強化する。」とあるが、大学卒業後の進路の受け皿が文化芸術の現場に少ないと感じる。また、インターンという名目で無償労働の供給が、大学等との連携であってはならないと考える。そのため、大学等との連携のためのガイドラインを国が提示し、例えば、大学生をインターンとして受け入れる場合、それが大学の単位として認められるような制度、職能を高めるために有効なプログラムのあり方を示すことが考えられる。また、インターンを受け入れる文化施設や芸術団体等の、研修のための労力負担に対して経済的な支援を提供するといった仕組み作りが考えられる。

●第2 1(3)【4頁】コミュニケーション教育について
「文化芸術を通じたコミュニケーション教育をはじめ,学校教育における芸術教育を充実する。」とあるが、子どもや若者と文化芸術の出会いをコーディネートする専門的な人材(コーディネーター)の育成、活用、雇用機会の創出が必要。また、学校がこうした取り組みを受け入れやすくするための、現職の教員に対するコミュニケーション教育の啓発や普及、大学での教員養成課程を対象としたコミュニケーション教育の実践などが求められる。

●第2 1(4)【5頁】文化芸術分野のアーカイブ構築について
「文化芸術分野のアーカイブ構築を着実に進めるとともに,その積極的な活用策を検討する。」とあり、賛同する。とくに貴重な作品や急を要する資料については、散逸や劣化を防ぐため、その所有者や管理者に対してデータベースの整備、保管の場の整備などを側面的に支援する仕組みが必要。

●第2 1(5)【5頁】地域文化の振興の奨励について
「地域の文化芸術資源の発掘・活用」において、過疎化や少子高齢化、地域コミュニティの希薄化による地域社会の衰退等の課題に取り組み、地域の文化芸術資源を活用している活動や、その地域拠点(既存のホール・劇場や美術館ではなく、廃校や商店街の空き店舗・倉庫等をリノベーションした文化拠点)の運営も奨励することが必要である。

●第2 1(6)【5頁】中核的国際芸術フェスティバルについて
「中核的国際芸術フェスティバルの国内開催や海外フェスティバルへの参加に対して戦略的に支援する」とあるが、とくに企画制作に複数年度を要する国際芸術フェスティバルの戦略的支援の一つとして、複数年度の助成や企画制作のための助成(フェスティバルのディレクターのリサーチにかかる渡航費助成など)の検討が求められる。

●第2 1(6)【5頁】中核的国際芸術フェスティバルについて
「東アジア芸術創造都市(仮称)」の趣旨に賛同する。また、その取り組みが国政府の主導ではなく、市民レベルの主導によるものであること、大学間の交流だけでなく、都市や地域間の交流、あるいは市民レベル(芸術家個人やアートNPO・NGO)での交流の活性化こそが必要だと考える。

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