4.05.2010

まだまだ劇場法(仮称)を考える

劇場法(仮称)をめぐる議論が活発になっています。いいことだと思います。
私は、前のエントリーで書いたことが自分で読み直しても非常にわかりにくかったので、もうちょっと整理して考えてみました。
劇場法(仮称)をめぐって、舞台芸術の実演団体、もしくは実演芸術家の視点と、(公立の)劇場・ホールの関係者の視点、それに国の文化政策としての視点、という構図になりがちだと思うんです。一方で、私が欠かせない視点だと思うのが、劇場・ホールを設置した自治体と、広域自治体の文化政策の視点、それに地域住民の視点です。
まず、劇場・ホールを設置した自治体が劇場法(仮称)という法の目的を理解し、それと整合した長期的な文化政策を講じないと、例えば首長の交代や議会勢力の変化の影響を受けてしまわないか。ある時期は劇場・音楽堂の認定を受けて積極的な文化事業を行い、首長が変わって一転して指定管理者制度で集会施設に様変わり、というようなことにならないためには、どうすればいいか。
次に、広域自治体(都道府県、もしくはより広域エリアの区域)での文化政策という視点がないと、例えば、県庁所在地にある県立のホールと市立のホールが劇場・音楽堂の認定を受けて、それ以外の県域には劇場・音楽堂がない、というアンバランスな状況が生まれないようにするためには、どうすればいいか。
最後に、地域住民の視点で、何のための公立文化施設なのかを考えていないと、ある日、劇場・音楽堂に認定されて、芸術監督を名乗る人が来て一風変わったプログラムになったり、レジデンスカンパニーが長期間稽古をすることになったとして、地域住民がカラオケやピアノの発表で使える日が少なくなったとか、やっぱり今までみたいにテレビに出ている有名人が時々来て歌謡ショーをやってくれた方がいいよ、という声が上がる、みたいなことにならないためにはどうすればいいか(そういう声はあって当然だし、そういう声に向きあって議論する場があるかどうか、という問題)。
私が「こういうことにならないためにはどうすればいいか」と思うことに対して、「いやいや、そういうことになって、どんどん上下の階層に振り分けられりゃいいんだよ。そうやって競争に生き残っていく劇場・ホールが生まれることが、この法律の目的なんだから」と言われたら、たしかにそうかもしれないですね、とも思うんです。そういう状況になってから考えればいいのかもしれない。私としては、今の公立文化施設のままでいいとは思っていないので。

2 件のコメント:

endou さんのコメント...

>今の公立文化施設のままでいいとは思っていない<・・・に一票です。

 そもそも自治体は、指定管理者や民間委託をする理由が変容してしまっている現状がありますね。(・・いや、もともと隠れた目的があって、これがおおっぴらになっただけということかもしれないですが・・・)

 下記のような批判が可能だと思います。
 http://geocities.yahoo.co.jp/gl/sa_saitama/view/20100414/1271256175

大澤寅雄 Torao Ohsawa さんのコメント...

endouさん、コメントありがとうございます。
お書きになった「自治体は、何のため・誰のために民間委託するのか?」も読ませていただきました。現場の問題を鋭くご指摘されていて、私自身も勉強になりました。
今後ともいろいろご教示下さい。

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