2.23.2010

引き続き劇場法(仮称)を考える

劇場法(仮称)について引き続き考えているんですが、そういえば、私が1年間研修させてもらったシアトル近郊の劇場のディレクターから教えてもらったことを思い出しました。
「アメリカの劇場は、だいたい3つのタイプがあって、producing theaterと、presenting theaterと、rentalに分けられる。producing theaterは独自に作品を作る施設と組織と資金が必要で、年間プログラムをレパートリーで組んで、作品をツアーで回して資金を回収する。presenting theaterはツアーで巡回する作品を受け入れたり、地域のアーティストと共同しながら年間のプログラムを組む。rentalは、基本的にスペースの貸し出ししかやらない。ウチは基本的にはpresenting theaterだね」。
その話を思い出したのは、劇場法(仮称)によって、公立文化施設を「作る劇場」と「見る劇場」と「集会施設」の3つの役割に分けるという考え方が、アメリカで聞いた話と近いような気がしたからです。
おそらく劇場法(仮称)は、フランスにおける国立の(民間が設置・運営して国が「国立」の称号を冠した)舞台芸術施設の法的な位置づけをモデルにしているのではないかと思うんですが、アメリカでは「法」はないけれども、「作る劇場」と「見る劇場」と「集会施設」の役割分担がされていて、私が見る限り、運営主体のミッションや地域のニーズにマッチした役割に落ち着いているようでした。というのも、アメリカの劇場の財源の多くは寄付金なので、どんな役割であっても、運営主体のミッションと地域のニーズがマッチしていなければ劇場経営が困難なわけです。
そこで、ふたたび日本を考えてみると、現状でも公立文化施設は「作る劇場」と「見る劇場」と「集会施設」というに分けようと思えば分けられると思うんです。ただ、その3つの役割が、運営主体のミッションや地域のニーズに必ずしもマッチしていない施設もあるんじゃないか。例えば、運営主体のミッションは「作る劇場」を標榜しているのに、実際の事業は「見る劇場」だったり、あるいは地域のニーズの掘り起こしが不十分なのに、無理して「作る劇場」を目指したりしていないか、というようなことです。
私は、そのあたりのズレが、劇場法(仮称)をめぐる議論によって見つめ直すきっかけになればいいと思います。

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