2.04.2010

「文化に関する世論調査」の考察-5

文化に関する世論調査」から、「5.文化芸術振興に関する意識や要望」について考察します。
我が国の文化芸術の中で,世界に誇れると思う文化はどれか聞いたところ,「伝統芸能」を挙げた者の割合が64.7%と最も高く,以下,「歴史的な建物や遺跡」(56.4%),「食文化」(31.5%),「演劇,舞踊,芸能」(28.8%)などの順となっている。(複数回答,上位4項目)
世界に誇れる日本の文化芸術について「伝統芸能」と「歴史的な建物や遺跡」が過半数の回答。なるほどなあ。それはそのとおりなんだろうけれども、私がアメリカで1年間生活したときに、現地の人が日本の文化芸術に関心があることを実感したのは、アニメやマンガ、それと村上春樹などの文学でしたね。それらを日本人が「世界に誇れる」と思っているかどうかは別なんだけれども、ちょっとギャップを感じます。
日常生活の中で,優れた文化芸術体験をしたり,自ら文化芸術活動を行ったりすることについて,どのように思うか聞いたところ,「大切だ」とする者の割合が88.5%(「非常に大切だ」28.6%+「ある程度大切だ」59.8%),「大切ではない」とする者の割合が7.1%(「あまり大切ではない」6.3%+「全く大切ではない」0.8%)となっている。
この調査項目は、前回調査(平成15年)でも同じ質問があって、「大切だ」とする割合が増えて(86.2%→88.5%)「大切ではない」とする割合は減りました(10.5%→7.1%)。鑑賞した経験も前回調査から増えたことを考えると、この6年間で、文化芸術に対する世論は好意的になってきているとは思うんですが、その背景にはいったい何が変わったのかな?
文化芸術への金銭的・人的その他の支援を行うことにより,人々が文化芸術により親しむことができるようになり,それにより培われた感性や創造性を発揮することで,社会の活性化や経済振興に貢献するとの考え方について,どのように思うか聞いたところ,「そう思う」とする者の割合が78.7%(「そう思う」33.9%+「どちらかといえばそう思う」44.8%),「そうは思わない」とする者の割合が13.1%(「どちらかといえばそうは思わない」9.2%+「そうは思わない」3.9%)となっている。
文化芸術への支援が「社会の活性化や経済振興に貢献する」という考え方を支持するのが8割だという、この設問の結果がもっとも意外だったんです。しかも、こんなに先行き不透明な経済状況の中で。いや、もしかしたら、先行き不透明だからこそ、文化芸術が社会に果たす役割を期待されているのかもしれないんですが。
今後,文化芸術を振興していくために,国において特にどのようなことに力を入れてほしいと思うか聞いたところ,「子どもたちの文化芸術体験の充実」を挙げた者の割合が48.6%と最も高く,以下,「文化芸術を支える人材の育成」(44.2%),「文化財の維持管理に対する支援」(41.9%)などの順となっている。(複数回答,上位3項目)
今回の文化に関する世論調査全体を通じて「子どもたちのために」という項目は、軒並み高い回答でしたが、最後のこの設問でも約半数の回答は「子どもたちの文化芸術体験の充実」でした。重要なことは、この設問が「国において」特に力を入れてほしい文化芸術振興とある点です。もう過去になってしまった事業仕分けのときに、仕分け人の中には「なぜ子どもの文化芸術体験のために国が支援しなければならないのか根拠が分からない」という意見が見られたわけですが、世論が求めているから、ということは大きな根拠だと思います。
あと、「文化芸術を支える人材の育成」が2番目に多い回答で、これは時代の変化を感じますね。「文化芸術を支える人材」という、表には見えにくい人材について理解が高まっていると言えるんじゃないでしょうか。

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