1.22.2010

「文化に関する世論調査」の考察-1

先日発表された平成21年11月の「文化に関する世論調査」について、私なりに考察してみたいと思います。まず、「1.文化芸術の鑑賞活動及び創作活動」から。
この1年間に,ホール・劇場,映画館,美術館・博物館などに出向いて直接鑑賞した文化芸術は何か聞いたところ,「鑑賞したことがある」とする者の割合が62.8%となっており・・・
(中略)
前回の調査結果(平成15年11月調査)と比較してみると,「鑑賞したことがある」(50.9%→62.8%)とする者の割合が上昇し,「鑑賞したものはない」 (48.8%→36.9%)と答えた者の割合が低下している。
1年間で直接「鑑賞したものがある」のが約12ポイントも増加しているのは注目ですね。平成15年と平成21年で、明らかに経済情勢は悪化したはずなのに、文化芸術の鑑賞経験がこれほど増えたのはなぜだろう?景気が悪化すると足が遠のいたのではなく、景気が悪化したからこそ、文化芸術に触れたいと考えたからなのか?
都市規模別に見ると,「鑑賞したことがある」とする者,「映画(アニメーションを除く)」,「音楽」を挙げた者の割合は大都市で,「鑑賞したものはない」と答えた者の割合は町村で,それぞれ高くなっている。
これは、全体としては鑑賞経験が増えているけれども、地域間での格差が広がっているという見方もできますね。
この1年間で,美術館・博物館に何回くらい行ったか聞いたところ,「行った」とする者の割合が42.2%(「1〜2回」26.8%+「3〜5回」11.5%+「6回以上」3.9%),「行かなかった」と答えた者の割合が57.5%となっている。
この設問、今までにはなかったと思うんですが、なぜ「ホール・劇場,映画館」の回数は聞かずに「美術館・博物館」に限定したんだろう?(劇場法の論議もあるはずなのに・・・)という調査項目自体に疑問が残ります。で、「行った」が42.2%、「行かなかった」が57.5%という全体の結果よりも、やはり都市規模別の結果が気になりますね。
都市規模別に見ると,「行った」とする者の割合は大都市で,「行かなかった」と答えた者の割合は町村で,それぞれ高くなっている。
うーん、やっぱり地域間格差はありそうですね。
どうすれば美術館・博物館にもっと行きやすくなると思うか聞いたところ,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合が37.0%,「入場料が安くなる」を挙げた者の割合が35.7%と高く,以下,「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」(24.7%),「全国的あるいは世界的に著名な芸術家の展覧会が開催される」(18.9%)などの順となっている。(複数回答,上位4項目)
文化施設のハードの整備には非難が集まる傾向が強いのですが、この調査結果では、「美術館・博物館ができる(増える)」という意見が最も多い。でも「入場料が安くなる」という意見とは僅差で、以前に比べればハードの整備を求める声は少なくなってきてはいると思いますね。
この1年間に,鑑賞を除いて,自分で創作・参加したり,文化芸術経験を支援する文化ボランティアの活動を行ったりするなど,文化芸術に関わる活動をしたことはあるか聞いたところ,「地域の芸能や祭りへの参加」を挙げた者の割合が10.1%と最も高く,以下,「文学,音楽,美術,演劇,舞踊,映画などの創作・参加」(7.4%),「音楽,舞踊,華道,茶道,書道などの習い事」(7.3%)などの順となっている。また,「特に行ったことはない」と答えた者の割合は76.1%となっている。(複数回答,上位3項目)
「地域の芸能や祭りへの参加」が10.1%と最も高い、とあるけれども、かつて地域コミュニティの基盤が強固だった時代には、地域の芸能や祭りに参加しない人の方がマイノリティだったことでしょう。そのことを考えると、10人に1人という参加の割合は、非常に低いと私は思います。逆に言うと、地域コミュニティの弱体化をよく表しているというか。
年齢別に見ると,「地域の芸能や祭りへの参加」を挙げた者の割合は30歳代で高くなっている。
これは意外だなぁ。なぜ30歳代で「地域の芸能や祭りへの参加」が高いんだろう?私も30代の最後になって地域の芸能や祭りへの参加に関心を持った一人なんだけど、それが全国的な傾向なのはなぜなんだろう?

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