6.09.2009

さくら苑のワークショップ

6月3日(水)に、横浜の旭区にある特別養護老人ホームさくら苑にお邪魔しました。おじいさん、おばあさんたちと作曲家の野村誠さんが「共同作曲」のワークショップを月1回くらいの頻度でやっていて、野村さんとワークショップコーディネーターの吉野さつきさんが、ワークショップでの老人たちを映像で撮りたいから、寅ちゃん手伝って、という話が来た。で、今回、ビデオカメラを持ってさくら苑に行ったわけです。
私が少し遅れて到着したら、共同作曲した作品「ワイワイ音頭」をみんなで歌っていました。キリのいいところでビデオを取り出すと、野村さんが、「さっきお話した、みなさんをビデオに撮りたいという話ですが、とりあえず試しにAさんとBさんで太鼓でも叩いてみましょうか」と。
Aさんは、いつもワークショップの明るいムード作りに貢献してくれるダジャレ好きのおじいさんで、Bさんは、たまたまショートステイしている、温和でまじめそうなおじいさん。その二人の周りに、テナードラムやコンボといった打楽器を、まるでドラムセットのように配置しました。
Aさんは、さっそくマリンバのマレットで太鼓を叩きながら、ニコニコ。ドラマーのような気になって叩いている。いや、もしかしたら、その気になって叩いている自分を、周囲の人が見て喜ぶのを見て、喜んでいる。一方、Bさんが手にしたのは、マラカス。シャカシャカと鳴るマラカスでドンドンと太鼓を叩く。一心不乱に叩いている。さほど周囲を気にする様子はありません。
しばらく見ていて、Bさんの叩くリズムが、一定のリズムの繰り返しのように聞こえ始めました。4拍子とか3拍子とか割り切れないし、微妙な間があったりする。真似してみようと思っても真似できないリズム。野村さんが「Bさん、そのリズム、とってもいいですね。もう一回やってくれませんか」というと、少し照れ笑いを浮かべたBさん、またそのリズムを叩いてくれた。野村さんがピアノの前に座って、リズムに合わせて両手で和音を弾いてみる。「うーん、難しいなぁ・・・」。
たしかに、規則性があるようでないのか、ないようであるのか、分からない。分からないけれども、Bさんは、確信を持って叩いているように見えるんです。まるで、Bさんの耳の中では何か音が鳴っていて、それに合わせているような感じ。野村さんが「いままで太鼓やってたんですか?」と聞くと「いや、ぜんぜん」とBさん。
その後、撮った映像をテレビに繋いでみんなで見てみました。接続に手間取りましたが、二人が叩いている様子がテレビに映ると、「あ、映った映った」とみんな大喜び。ふとAさんを見ると、テレビに映る太鼓を叩く自分を、真剣な眼差しで見ています。いつもニコニコして周囲を笑わせるのが得意なAさんが、テレビに映る自分を、食い入るように、どちらかというと厳しい眼差しで見ている。あれは、どんな気持ちだったんだろう。他の人の目から見た自分に戸惑っているのか、それとも、こんな風にすればもっとウケるのに、とか、もっとカッコよく見せるにはどうすればいいんだろう、とか考えているのかなぁ・・・。
他にも印象に残ったことはたくさんあるけれども、この日のAさんとBさんの様子は、いろんなことを考えさせてくれました。

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