6.10.2009

少数民族の源流を辿る旅人の話(2)

趣味で少数民族の源流を追い求めて旅をするAさんの話の続き。
出会って1ヶ月後くらいの日曜の午後、Aさんの自宅にお邪魔しました。ちょうどウチの息子と同じくらいの息子さんがいて、子供同士がバタバタと仲良くじゃれ合っている中で、手塚夏子と私は、Aさんの奥さんが入れてくれたお茶をご馳走になり、さっそくAさんが用意してくれたスライドを見せてもらいました。
映写機から壁に投影されたのは、中国・貴州省の山岳地帯の写真。貴州省という地名を私は初めて耳にしましたが、Aさんが言うには、観光資源と言えるのはアジアで最大の滝があるというくらいで、あまり知られていない地域だそうです。平地がほとんどなく、急な山の斜面に張り付いた小さな集落と棚田が点々とある、のどかな風景。のどかと言えばいいんですが、経済的には貧しい地域であることは、写真からもすぐに分かりました。
写真と話は、ここからがメイン。そこに暮らしているミャオ族という少数民族が、とても興味深い文化を持っているそうです。見せてくれた写真は、お祭りのようでした。若い女性が民族衣裳を着て、その上に膨大な量の銀細工を身に纏っているんです。頭の上、首の周り、肩から胸、腰の周りに、紐か何かで繋がれた小さな銀細工が、じゃらんじゃらんと、すごく重そう。たぶん重さは数キロとか十数キロなんじゃないか。それに、銀細工の形や体への付け方は一人ひとり違っているんです。
「この銀細工は先祖代々受け継がれていて、銀細工を買い足しながら、また自分に娘ができたら、受け継いでいくんです」とAさん。なぜ経済的に貧しいコミュニティで、こんなに豪華な銀細工を?と聞くと、「それは、結婚相手の男性を見つけるためなんですって。集落の内外の男性が集まってくるお祭りで、少しでもほかの女性より目立つ銀細工を身に纏って踊ることで、家督の良さを含めて、男性にアピールしているんですよ」。へーぇ、なるほどねぇ。言われてみれば、男性は目立った装飾はなくて、太鼓を叩いたり、笙のような楽器を演奏しながら踊ったり、踊る輪の外で銀細工を纏う若い女の子をぼーっと眺めていたりする。
「ところが最近、中国全体が経済的に発展してきて、ミャオ族の男性も、出稼ぎで都市に流出しているそうなんです。すると、お祭りにも帰ってこなかったりして、祭りと銀細工の役割が薄くなってきた。で、先祖代々受け継いできた銀細工を手放してしまう家も出てきたそうなんですよ」。

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