5.28.2009

「伝統を受け継ぐ」ということ

先週の土曜日、藤野囃子保存会の総会がありました。いつもの稽古ではなくて、大人が集まって、前年度の事業や決算とか今年度の計画について話し合うものですが、そういうのはチャチャっとやって、飲み会になるわけです。
酒を飲みながら、私の左隣にいた大正生まれの83歳の電気屋のじいさんに、昔のお囃子の話を聞きました。最近はあまりやらなくなったけど、昔は祭りでチョイチョイやっていた演目があったんですって。
「かならず子どもらがよ、寝に帰ってからやるんだが、"夜這い"っちゅう踊りがあってな。狐が女に化けて、ひょっとこと酒を酌み交わすんだ。女が酔っぱらったっちゅう仕草をして、横になるだ。そうすっと、ひょっとこが女の足元の着物の裾を広げてな・・・」
ここからは、部外秘ということで・・・じいさんの話を聞いていたその場の一同としては、そのような踊りも、伝統として保存すべきである、という結論に達したわけです。
あともう一つ、おもしろかった話。
保存会のメンバーが、かなり前に録音したお囃子のテープを聴き返したら、太鼓と笛の掛け合いの部分で、いま演奏しているのと違う箇所を見つけたそうです。楽譜があるわけじゃないので、どのように違っているのかを歌って聴かせてくれるわけですが、新人の私には、どう違うのかハッキリとは分かりません。でも、みんなは「そりゃ全然違う」と。
保存会の先輩たちが言うには、昔は、お囃子を伝えるということは、教える側にもプライドがあったから、後輩に懇切丁寧には教えてくれなかったと。むしろ、「これは俺だけの技だ」という技術は、稽古では教えてくれずに、祭りの時だけ人前で披露することがよくあったそうです。
保存会のメンバーは、酒をかなり飲んでいるにも関わらず、その昔に録音したテープのような演奏に戻すために自分たちの演奏を修正した方がいいのか、それとも今までどおりの演奏でいいのかを、真剣に話し合いました。その結果、やはり昔のような演奏に戻そう、ということになりました。
その理由は、藤野町内には囃子保存会が他にもあって、それらの源流は同じで、源流を正しく後世に伝えていける人材と技術力があるのは、「ウチの保存会しかねぇじゃねえか」という中堅リーダーの意見に、大勢が同意したからでした。その意見にこそ、私はプライドを感じました。
その話を黙って聞いていた、私の右隣の大学生のお兄さんが、ポソっと私に言ってくれました。「それをまた子どもに伝える俺らにとっちゃあ、すごいプレッシャーなんすよねぇ・・・」。そうか、それもそうだよなぁ。
大変なことなんだよなぁ、伝統を受け継ぐっていうのは。

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