5.19.2009

いわゆる『巨大国営マンガ喫茶』について

最近、ニュースで取り上げられた「メディア芸術の国際的な拠点」、鳩山氏が言うところの『巨大国営マンガ喫茶』なんですが、文化庁が公開したメディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会「メディア芸術の国際的な拠点の整備について(報告)」(平成21年4月)の概要より、引用させていただきます。
1.メディア芸術の現状と課題
○ 現在、我が国には、マンガ、アニメ等メディア芸術の各分野ごとに作品の展示等を行う施設は存在するものの、メディア芸術のすべての分野を包括的に取り扱い、作品を常時展示するとともに、関連情報の集約・発信等を行う施設が存在しない。
○ このため、国内外で高まるメディア芸術作品鑑賞の需要に応えることができておらず、また、我が国のメディア芸術の海外への発信が不十分となっている。
○ このほか、メディア芸術の一層の振興を図る観点からは、メディア芸術作品の収集・保管及び発表の機会の拡充、人材育成の強化等が課題となっている。

2.メディア芸術の国際的な拠点の整備の必要性及び期待される効果
○ 上記の課題に対応するためには、メディア芸術のすべての分野を包括的に取り扱い、作品の網羅的・体系的な展示、関連情報の集約・発信、作品の収集・保管、人材の育成等を総合的に行う「メディア芸術の国際的な拠点」の整備が必要である。
○ 同拠点の整備により、我が国の文化のみならず、観光及び産業の振興も期待される。

私は、最初から結論として反対するわけじゃないけど、この「現状と課題」と「必要性と期待される効果」については、どう読んでも疑問に感じます。
まず、現状では「施設が存在しない」のは事実ですが、「このため・・・鑑賞の需要に応えることができておらず」「発信が不十分となっている」というのは、どうなんだろう。施設があれば、需要に応えることができて、十分な発信が可能なのか?
最後に、「同拠点の整備により、我が国の文化のみならず、観光及び産業の振興も期待される」と言うけれども、新国立劇場や新国立美術館が整備されて、どのくらい観光や産業が振興されたんだろうか、教えてほしいですね。まぁそういうデータは、出そうと思えば出せるんだろうけど、誰がその恩恵を受けるのかということが大事だと思うのですよ。
で、私としては、もし国としてメディア芸術を振興する覚悟があるなら、目を向けるべき現状課題は、以下のようなポイントなんじゃないかと思うんですね。
2007年10月13日付のasahi.com「アニメ制作者らが協会設立 『低賃金』打破を」から、引用させていただきます。
日本には大小400社を超すアニメ制作会社があり、そこで働くアニメーター・演出家は正確な統計はないものの4500人程度とみられている。協会によれば、アニメーターは1日平均10時間以上働いても、全体の2~3割は年収100万円前後。新人は半年で半数が、1年後には7割が辞めていくという。

それから、2009年5月9日付のJ-CASTニュース「テレビゲーム開発からパチンコ業界を目指す 楽しく安定した生活を望むクリエイター」からも引用させていただきます。
かつてクリエイターを目指す若者が目指したのは、ゲーム、音楽、出版などの業界。しかし、出版不況、音楽CDが売れない時代が続き、ゲーム業界でも好調なのは一部のメーカー。作品によって当たり外れがあるため、給与が不安定。しかも仕事はきつい。パチンコ業界は業績が落ちたといっても25兆円といわれる巨大産業である。パチンコ台の販売ルートがしっかりしていて、業績が安定している。だからクリエイター希望者はこの不況の時代でも安心して勤められる職種、と判断しているのだそうだ。

さぁ、次の選挙で、どの政党やどの候補者が、どのように文化政策を取り上げるのか、しっかり観察しておこう。

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