2.18.2009

「卵」に浸透して腐らせる得体の知れない何か

いま、中央線の電車の車両は、乗降ドアの上に液晶ディスプレイが埋め込まれていて、ニュースやマンガ、広告などが繰り返し放送されているんです。その液晶ディスプレイに、今週から登場したのが、陸上自衛隊と海上自衛隊のCMなんです。
海上自衛隊のCMは、「この国を守るのが、私たちの誇りであり、使命である」みたいな趣旨のメッセージで、だいたい想像できる内容なんですが、陸上自衛隊のCMは、「いま、このサイトにアクセスすれば、陸上自衛隊オリジナルのゲームや、オリジナルのデコメが楽しめます」というような内容。え?自衛隊って、そういう人材を求めてるんですか?みたいな宣伝。
内容はともかく、通勤通学で満員の中央線で、自衛隊のCMが流れているという状況は、少なくとも私にとっては違和感があります。5年ほど前にアメリカに滞在していたときに、テレビのCMで、戦闘機が空を舞ってすごくスタイリッシュでカッコいいイケメンが汗を流して訓練している映像が流れて、それを見たときに、トム・クルーズ主演の「トップ・ガン」みたいな映画の宣伝かと思ったら、空軍のCMだったんです。しかも当時、毎日の夕方のニュースの終わりに、イラクやアフガニスタンで戦死した人の名前と出身地と顔写真が、普通にテレビの中で放送されていて、カッコいい空軍のCMと、とても寂しい戦死者のニュースが毎日放送されている状況に、私はとても違和感がありました。そして、まさか有り得ないと思ってたけど、気がついたらブッシュ大統領が再選していました。
小説家の村上春樹氏が、エルサレムで「壁」と「卵」について語りました。日本人の多くは、すばらしいスピーチだったと思ったことでしょう。私も、すばらしいと思いました。ただ、パレスチナで起きていることと同じ地平に、中央線の電車の中で、気がついたら自衛隊のCMが始まっていた、という事実にも、目を向けたいと思うんです。
高くそびえ立つ「壁」は、ずっとずっと海の向こう側。けれども、いつの間にか「卵」の殻を浸透して、中身を腐らせてしまうような、得体の知れない何かが、すぐ近くにあるかもしれません。

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