11.11.2008

日本のアートの現場に海外研修は活かせるのか

アート・マネジメントに関わる人材の海外研修について、いろんな見方があります。例えば、「そもそも海外研修での見聞や経験が、日本のアートの現場に活かせるのか?」という疑問、あるいは「助成金で海外に行ってブラブラしてるのなんて税金の無駄使いだ」といった批判が、まったくないとは言えないでしょう。
実際に海外研修を経験した人自身が、ずっとブラブラしてました、とか、研修しても無駄でした、と言うのであれば、その人の考えは否定できませんが、経験していない人の疑問や批判に対しては、少し言いたいこともあります。
私の場合は、1年間、研修先に机と椅子とPCを与えられて、各セクションの仕事を数ヶ月ずつ体験し、いくつかの仕事はある程度の裁量を与えられました。つまり研修先の職場の一員として迎えてもらえたわけです。これが、単にお客さんとして迎えられて、ずっと職場見学だけになると、大した研修にならなかったと思います。
でも、大事なのは研修を終えて帰国してからで、研修期間以上に厳しい現実がありました。海外研修は、ある意味では自分にとっての理想を体験し、帰国すると現実に引き戻されるわけです。その理想と現実とのギャップが大きければ大きいほど、精神的なダメージは大きい。私の場合、まだ、そのダメージを乗り越えたとは言えません。むしろ、ずっとダメージと向き合うことによって、海外研修の成果を活かすことになっているんじゃないかと思います。
あと、私にとっては、海外研修を経験した仲間、先輩、後輩との緩やかなネットワークが、Arts Managers' Netという形で継続していて、そのメンバーと今でも情報を共有したり、現場の仕事を助け合ったり、議論したりできるのは、とても大きな財産になっています。メンバーの立場や活動のフィールドも、少しずつ広がってお互いに刺激しあうようになりました。これは、海外研修の副産物ではあるけれども、とても大きな成果だと思います。
なので、「海外研修での見聞や経験が、日本のアートの現場に活かせるのか?」と聞かれたら、私は、活かそうと思う人だけが活かすことができるし、そういう仲間と出会うこともできますよ、と答えたいのです。

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