10.21.2008

アメリカの住宅事情と文化施設

このところ、藤野町のローカルなアートと地域の関わりを観察していたんですが、たまたま、2週間ほど前に、私が5年前、シアトル近郊の小さな地域劇場で1年間、劇場運営の研修をさせてもらったときのディレクター、スティーブからメールをもらっていました。
スティーブは、10年間務めたKirkland Performance Centerを円満に退任して、10月末からカリフォルニアで、大学附属の大小2つのホールを有する舞台芸術センターのディレクターに就任したとのこと。おめでとう、5年前は本当にお世話になりました、こんどの舞台芸術センターはスゴく立派な劇場だねぇ、というメールを出したら、スティーブはすぐに返事をくれました。
「新しい劇場に行くのでとてもワクワクしてるんだけど、KPCを離れるのは寂しいし、この経済状況の悪化で、集客も資金調達も落ち込んでいるからね。今後ますます厳しい状況に向かっていくかもね」
という話。それで、あることを思い出しました。
たしかスティーブは、私が研修を終える直前に、新しく家を買うという話をしていたなぁ。そのとき彼は、
「いま、このあたりの家を買うとね、資産価値は減らずに、逆に売却するときは高値で売れる可能性があるんだよ。だから最近、住宅は投機の対象なんだよね」
みたいなことを言ってた。そのときは、ふーん、そんなもんですかぁ・・・としか思ってなかったんですが、今になって、それが世界経済を揺るがす大きなバブルだったということに気がついたわけです。
それに絡んで覚えているのが、たまたまスティーブの車に乗せてもらっていたとき「この家を買うつもりなんだよ」と言って、車を降りて家を見せてくれたんです。その玄関に住宅販売のチラシが置いてあって、「窓は南向き、駐車場は2台分、買い物至便」のような住宅の売り文句が書かれているんですが、その項目の一つに「劇場が近くにあります」と書いてあって、それには少し驚きました。
つまり「駅に近いですよ、買い物が便利ですよ」といった仕事や生活の便利さだけじゃなくて、「劇場がありますよ」という、文化施設の存在も、このあたりに住もうか、住宅を買おうか、と迷っている人への重要な付加価値になっているということに、驚いたわけです。
日本の不動産業界は、住宅や土地の付加価値として、地域の文化施設を見ているかなぁ・・・と、5年くらい前のその時に、思った記憶があります。
で、スティーブのメールには「今度、カリフォルニアに来ることがあれば、ウチに泊まるといいよ。こんな家に住むことになったんだ」といって画像を送ってくれました。それを見て、またまたビックリ。NPOの劇場のディレクターが、なんでこんなゴージャスな家に住めるんだ・・・と。アメリカって国は、ホントによくわかんないよなぁ。

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