10.17.2008

「ぐるっとお散歩篠原展」の話 (7)

高橋さんのお宅を後にして、写真家の三宅さんの展示を観に行きました。
三宅さんは篠原の近くに住んでいて、娘のハナちゃんがうちの息子と一緒の保育園で、今まで何度か車に乗せてもらったり、小さな展示会を見せてもらったこともあったし、私も他人のことは言えないんですが、いつもボサボサの髪の毛と無精髭を生やしていて、いかにも山男っぽいおじさんです。
三宅さんの作品は、おもに山の写真なんですが、私の印象では、壮大で神秘的な自然というよりも、川とか、木とか、葉っぱといった自然と人間との対話を感じる写真が多いように思います。あと、怪しげなキノコの写真が多んですが、三宅さんが撮るキノコは植物じゃなくて、まるで地球外生物のように思えるくらい、不思議で生々しい。
その三宅さんの「ぐるしの展」の会場は、篠原の集落から山の奥に入り、途中でケモノ道のような、草を踏みつけて通れるようになった山の斜面を数十メートル登ったところの傾斜地。木陰に四畳半ほどの厚板とゴザを引き、テーブルと座布団が置いてあって、三宅さんはニコニコ笑って斜面を登ってきた私たちに手を振っていました。
さきほどお邪魔した加藤さんや高橋さんのお宅が、とても素敵で立派な住宅で、その直後に木陰に厚板、ゴザ、座布団、テーブルという展示空間。あまりの落差で、いやー、かなり脱力しますね、と三宅さんに言うと、
「なに言ってんの、気合い入りまくってるよ、もう汗ダラダラだよ」
という。で、作品はどこに展示されてるんですか?と聞くと、これだよこれ、と言って、ゴザの上にある3冊のクリアファイルを指さす。ページをめくると、山の写真やキノコの写真。
キノコの写真の一番最初に、2つの赤いキノコを真上から撮影したもので、同じサイズの円いカサが2つ並んでいました。思わず、おっぱいみたいですね、というと、「あ、やっぱりそう思う?そう言ってくれる人、多いんだよね」と嬉しそうに笑いながら、お茶を入れてお茶菓子まで出してくれました。
「こっちも作品だから見てよ」と言われたのが、いくつものオペラグラスのようなもので、中を覗くと、レンズのところに写真が貼ってあり、左右の目の焦点をズラすと、おお、立体に見える!手前は川で、向こうに山が!と、ちょっと感動。しかしこの感動も、軽い脱力感を伴うんだよなぁ・・・そこがいいんだけどね。
ひととおり作品を見せてもらって、山の斜面のゴザから見える空や向こう側の山の木々を眺めながら、三宅さんに篠原地区の話を聞きました。
「長いこと篠原と関わってきたけどね、昔は、何人もガンコな爺さんがいたし、篠原にしか見られないような慣習や行事がたくさんあってね。葬式なんて、村の人は一週間仕事を休まなきゃならないくらいだったし。それが、一人ずつガンコな爺さんがいなくなると、そういう行事も無くなっちゃったりね。葬式だって葬儀屋に任せるし。そうすると、どこの町とも変わらなくなっちまうんだよ」
そうですか、これでも篠原は変わってきたんですねぇ、なんて言ってる間に、だいぶ太陽が傾いてきました。じゃあボチボチ行きます、帰りのバスの時間もあるし、と言うと、三宅さんは
「バス?いいんだよ、バスなんて乗らなくったってさぁ、テキトーに誰か車で送ってくれるんだよ、だからゆっくりしていきなよ」
と言ってくれました。
いやいや、ここでゆっくりしてたら、ホントにお尻から根が生えてきそうだから・・・

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