10.16.2008

「ぐるっとお散歩篠原展」の話 (6)

翌日の「ぐるしの展」の2日目。民家を開放して展示している篠原在住の美術家の作品を見に、ぐるっとお散歩しました。
篠原の里の近所で、小道を入って少し坂を上ったところにある、加藤さんのお宅。縁側のある民家の庭に、すいとんやデザートを食べている人たち。古いけれども太くて立派な柱に支えられた玄関を入り、広い畳の部屋には、色彩豊かな布と縫い糸で描かれた絵本の原画が展示されていて、階段には日本画や抽象画、小さな立体作品が展示されていました。
これらの作品は、とくに共通のテーマがあるわけではないし、スタイルもまったく異なるんですが、この古い民家に展示されているためか、不思議と違和感がなく、なんとなく共通のテイストが感じられました。地味だし、別にこだわったワケじゃないかもしれないけど、キュレーションのセンスがいいなぁと、勝手に感じていました。
次にお邪魔した高橋さんのお宅は、夫婦ともに美術家で、ご自身の作品を展示されていたんですが、私にとっては家そのものが作品のようでした。デザインが奇抜というわけではないものの、空間の配置と機能性、壁の素材や肌触り、家の内部と外部の接点の持ち方が、とても快適で居心地がいいんです。
お家は生活する棟と、アトリエの棟に分かれていて、その間にテラスがあります。篠原の高台にあって、遠くまで山並みが見通せます。
「昨日のコンサートに出られてましたよね?」
と高橋さんのご主人、政行さんから声をかけていただきました。ええそうです、それにしても素敵なお家ですね、と言うと、高橋さんはこう言いました。
「我々アーティストは自由業だから、家を建てるのにローンなんか組めないでしょ。だから、いっそのこと自分で作ろうと思ってね。私は、いつも大型の立体作品を作っているから、建築施工のこともある程度は分かるんで。家造りの基礎は地元の信頼できる業者さんにお願いして、自分ができる施工は自分でやろうと。だって、私に言わせれば、家づくりは一生の中で一番楽しい仕事だし、建て売り住宅を買ったり業者に任せるのは、はじめから夢をあきらめるのと同じだからね」
なるほど、そうかもしれませんね、と相づちを打ちながら、奥さんが入れてくれたお茶を飲みました。そういえば政行さんは、昨日のコンサートの「まますけ」でベースを弾いていたことを思い出した。いやー、昨日のコンサートは楽しかったですよ、と言うと
「コンサートが終わってからね、みんなで考えたんだよ、なんで『ぐるしの』での演奏は、こんなに楽しいのかねって。そしたら結局たどりついた結論は、境目がないからなんじゃねえかってことになってね。演奏する側と聴く側の境目が、ないんだよ」
ああ、そうか、たしかにそうですね。政行さんに、いいこと教えてもらいました。

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