9.15.2008

「Dance Asia」とグローバリゼーション

今週の金、土、日と、東京の森下スタジオで「Dance Asia」という公演があります。以前書いたように、その企画に出演するインドネシアのダンサー、ジェコ・シオンポとパートナーのアジェンが、その公演のあとにウチに泊まりに来ます。で、私はジェコのダンスを観たことがなかったので、企画している後藤さんと横堀さんにお願いしてビデオを借りて、その御礼に予告編にして編集しました。



手塚夏子が「アゴをはずしそうになった」というのがよく分かります。とにかくすごいスピードと身体能力。
それと同時に、ジェコのダンスは「パプア民族のリズミカルなステップと、ヒップホップが鮮やかに融合」(告知サイトのテキストより)とあるんですが、この「融合」のあり方が、興味深いんです。よくアートの表現について、伝統と現代の融合とか、西洋と東洋の融合とか、言われますが、そういった「違うものをくっつけて新しいものにしました」というものではないんです。
昨年のアジアダンス会議のときに手塚夏子がジェコに聞いた話で(正確かどうかは分からないんですが)、彼はパプアの出身ですが、パプアでは、日常的に、歩く、走る、感情を表現するのも、まるで踊っているように見えるそうです。あるとき、ジェコはマイケル・ジャクソンに憧れてヒップホップをやり出したと。それでニューヨークに行ってヒップホップを勉強していたところ、人から「パプアのダンスを振り返ってみろ」と言われて、ジェコは、パプアのダンスの中にヒップホップがあることに初めて気がついた、ということらしいのです(「アジアダンス会議」での彼の記録はこちらこちら)。
様々な文脈で「グローバリゼーション」が言われています。またグローバリゼーションの進展には、賛否がつきまといます。wikipediaに書かれている中で、よく言われるのは「全世界の様々な物資、人材、知識、技術などを利用できるため、科学や技術、文化などがより発展する。また、各個人がそれを享受することができる」という肯定と、「他国の文化(とりわけアメリカ文化)の流入によって、自国の文化や伝統的な社会制度が破壊される」という批判。
ジェコのダンスは他国の文化を受け入れることで、自国の文化や伝統を再発見し、自分自身のアイデンティティをより強いものにしている。それは、単純にグローバリゼーションを肯定もせず、否定もしていない。とことん個人の表現を追求することで、ローカルな文化とグローバルな文化の繋がりを発見し、個人がローカルにも、グローバルにも根を下ろしているわけです。
来週、ウチにジェコが来たら、地元のお囃子の保存会の稽古を見に行こうと思っています。興味のある人は、ご連絡下さい。

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