8.04.2008

「恥ずかしいからやめなさい」

法務大臣の「恥の文化」という言葉から、いろいろ考えました。ちなみに私は、「菊と刀」という書物があることや、その中で「恥の文化」について論じられていることはうっすらと知っているんですが、恥ずかしながら不勉強で、それ以上のことは知りません。が、おそらく、「恥」というとマイナスの側面を持つ言葉が、日本人の美意識や美徳に通底する価値観だということは、なんとなく理解できます。
昨日、家族で地元の温泉に行ったんですが、散歩のつもりでちょっとした山道を歩いたんです。かなり暑かったこともあって、3歳の息子が途中で「もう歩けないよう」と言って、ワーワー大声で泣き始めました。泣き続ける息子に、私やカミさんは、「あんまり泣くと、ヤマンバが来ちゃうぞう」と脅かしました。それでも泣きやまみませんでした。
しばらく歩くと、道端の農家の小屋で、畑で採れた野菜を売っている老夫婦がいました。おじいさんが、「おい、泣くんじゃねえよ、男の子だろ、恥ずかしいじゃねえかよ」と笑顔で言いながら、たぶん自分が食べるつもりで持っていたゆで卵を息子に握らせてくれました。息子は、ゆで卵が嬉しかったのか、見知らぬ人に声をかけられて恥ずかしかったのか、それとも「男の子が泣くのは恥ずかしい」と思ったのか、すっと泣きやみました。
私は、考えてみたら「恥ずかしいからやめなさい」という叱り方は、ほとんど今までしたことがありません。たしかに、公衆の場で息子が泣くと、私が恥ずかしいと思うことはあります。その時、「恥ずかしいからやめなさい」と言いたくなる気持ちは、正直あります。
ときどき、他人の親子の同じような場面に遭遇します。公衆で泣いている子どもがいる。周囲には迷惑そうな空気が漂っている。親が「恥ずかしいからやめなさい」という。その一言は、自分が恥ずかしいと感じる原因や、公衆に迷惑をかけている状況の責任を、子どもに押しつけていないだろうか。
子どもが人前で泣くことは恥ずかしいことなのか?とか、なぜ子どもは泣いているのかを理解することが大事なんじゃないか?とか、「恥ずかしいからやめなさい」という言い方は、子どもに「恥とは何か」「美徳とは何か」を教えることになっているのか?とか、考えてみたりして。ま、こういうことを言うと「そうやって甘やかすから子どもがダメになるんだ」という人もいるかもしれませんが・・・。
でも、昨日、おじいさんが息子に言ってくれたのは、すごく素敵な言い方だったんです。その表情、言い方、物腰、おいしいゆで卵・・・息子が泣きやんだのは、たぶん、そういう言葉以外のメッセージというか、美徳を感じたからじゃないかと思うんです。私にも、そういう美徳が必要なんだよなぁと。
男の子なのに恥ずかしい。女の子なのに、大人なのに、日本人なのに、恥ずかしいと思うこと。その「恥」について説くにしても、「美徳」が備わっていることが大事なんだなぁと思いました。

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