7.09.2008

芸術家のtransition

芸術家も、変移しています。
欧米の事情はよく知りませんが、日本では伝統的に、強固なヒエラルキーのある集団に芸術家は属しているという傾向があるように思います。伝統文化での家元制度にしても、西洋から輸入したクラシック音楽やバレエにしても、教育体系が、そのまま師弟関係や実演活動の拠り所になりがちです。美術にしても、基本的に個人活動ですが、団体展を前提とした制度や評価が随所に見られます。
しかし、近年では、そうした集団から離れて個人として独立した活動を展開する芸術家が増えています。集団を維持するよりも、プロジェクトごとに人を集めてテンポラリーなユニット名を名乗る。年齢や経験年数による上下関係よりも、気が合う仲間のような横の繋がりを大事にする傾向があります。
また、プロデューサー、キュレーター、オーガナイザー、コーディネーターといった専門職が育ってきている一方で、そうした立場によって芸術家自身が商品化されることに危機感を持つ芸術家もいます。芸術家が自ら企画、制作、実施する「アーティスト・イニシアチブ」とも言える活動は、自らの存在意義と社会との接点を問い直すことになります。
こうした芸術家のtransitionは、前述の芸術環境のtransitionによって必要に迫られて変移しているとも言えます。しかし私には、芸術家という特殊な職能を有する人間が、社会全体のtransitionに対して敏感に反応した結果、従来の社会の枠組みを打開するための態度や行動のようにも見えます。

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