6.20.2008

トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクト

アートマネジメントの現場の課題を改善するために、様々なアイデアを募集した「トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクト」。1次選考に応募された案件から、パブリックコメントの募集に参加された提案を読んで、このプロジェクトの効果がおぼろげながら見えてきたように思いました。
個別の提案について読み込んだわけではないのですが、タイトルを見ただけでも、活動のジャンル、地域、対象者(実演家、制作者、観客など)などは様々ですし、それぞれの提案の背景には、深刻な現状課題や切実さが見えます。まず、そうした個別のジャンルや地域において、何を課題と捉えて、どのような改善方法を自ら提案、実施するのかということを顕在化、視覚化できたということが、実は、すごいことじゃないかと思いました。
芸術環境の改善という「中間支援活動」の、自ら実行しようとする具体的なアイデアが全国から約80件も集まったということと、それを主導したのが企業のメセナ活動だということが、これからの文化政策の大きな方向性の転換を予想できると思ったわけです。
文化庁が行ったパブリックコメントと比べても、2002年11月の文化審議会「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」(答申案)に関するパブリックコメントで集まった意見が134名。今年2月から3月にかけての「アートマネジメント人材等の育成及び活用について」では23通72件の意見。内容も形式も違うので、挙げられた声の数を単純には比較できないものの、こうした行政主導のパブリックコメントでは、往々にして行政に対する要求が多くの意見になるでしょう。それに対して行政側が取捨選択して政策に反映して予算をつけるにしても、実現に至るまでのスピードと市民側の主体性という点で、影響力には大きな違いがあるのではないかと。
おそらくKAIZENプロジェクトは、現時点までも試行錯誤だったと思いますし、これからも試行錯誤が続くと思うのですが、私が期待したいのは、個別の提案が個別に完結するのではなく、有機的に(偶発的に)相互に影響を及ぼし、連携し、相乗効果が生まれることです。
それにしても、このプロジェクトのコンセプトメイキングから実務的な進行を行っているトヨタ自動車さんと企業メセナ協議会さんの努力と、先見の明には脱帽です。芸術における「新しい公共」が、具体的に見えてきたような気がしますし、だからこそ、政府セクターの役割が今まで以上に明確にならなければならないと思います。

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