6.16.2008

文化的な営みと生存の行方

先週の金曜日、東大の文化資源学公開講座「市民社会再生」で、中村雄祐先生の話を聞きました。
「読み書きと生存の行方」と題された中村先生の論文に基づいて、文字、文書、紙などと人間の生存との関わりを、多種多様な統計分析、歴史的背景、調査や実践からの考察が展開されました。
事前に論文を読んで、当日の話を聞きながら、おぼろげに感じたことは、読み書きが人間の生存の行方と密接に関わっているように、文化もまた、生存の行方を左右しているんじゃないか。また、その科学的な根拠を研究する余地はあるんじゃないかと思いました。
例えば、国や地域別に、犯罪発生件数、自殺件数、精神疾患患者数といった数値に対して、芸術の鑑賞活動や創造活動といった文化的な営みの頻度、さらに経済的な貧富の格差との相関関係を調査すると、何が見えるのか(たぶんソーシャル・キャピタルの研究では、類似した統計調査があると思うんですが、少し趣旨を変えて考えています)。
あるいは、犯罪、自殺、精神疾患の数の多い集団と少ない集団では、文化的な営みにどのような違いが見られて、経済的な格差はどのような状況にあるのか、とか。
私が想像するのは、犯罪や自殺やストレスは、経済的格差そのものが要因ではなく、格差によって生まれた弱者側の文化的な営みの貧しさや、格差の強者側の文化的な排他性などが要因ではないか、という仮説なんです。
この仮説が証明できたら「文化はインテリや金持ちのもの」と考える人に、「いえいえ、文化は人間の生存のために必要なものです」と正面から対抗できるんじゃないかと思いました。

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