6.08.2011

日本芸術文化振興会に対する私の意見

最近、私が痛烈に感じているのは、この国では「自分一人が声を挙げたって何も変わらない」という考えが、長年、こびりついてきた結果が、いろんなところに表面化しているのだなぁということです。たしかに、私一人の声で世の中が変わるわけじゃないとも思うんですが、その声が挙がらなければ、絶対に世の中は変わらない。これは、絶対です。誰かに声を挙げてもらって、誰かに変えてもらおうと思っている限り、その人が思うような世の中には、絶対にならない。
というわけで、日本芸術文化振興会の「文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの在り方について(報告書案)」へのパブリックコメント、私は以下のような内容で提出します。これは個人の意見であり、いかなる組織や団体の考えでもありません。引用してもらっても参考にしてもらっても結構です。
細かいことですが、日本芸術文化振興会のサイトの情報公開から「役員の状況」というのをクリックしても、どこにも役員の状況が見えないんですけど………。

〈全体を通しての意見〉アーツカウンシルの立場について
海外諸国のアーツカウンシルの先進事例では「アームズレングス」の理念のもと、民間の視座に立って芸術文化振興が担われている。その最も重要な観点から見て、独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」)の意志決定機関や執行機関における、官僚や官僚OBの在籍には大きな違和感を感じる。また、今回のアーツカウンシルの設立が、振興会のさらなる肥大化と円滑な業務や合理化の妨げにならないように期待したい。

P.4「2.現在の助成事業の審査・評価等に係る現状と課題」
脚注に「平成21年度の調査実績は、助成金の交付件数が1,190件であったのに対し、公演調査等の件数は342件」とあるが、平成21年度の公演調査等の件数342件のうち、首都圏を除く地方の公演調査等は何件か。また、公演調査の実施・不実施の判断基準について説明されたい。

P.4〜5「2.現在の助成事業の審査・評価等に係る現状と課題」
ここで示されている箇条書き11項目の課題に加えて、助成の申請締め切り(11月中旬)から交付の内定通知(翌年3月下旬)まで、審査や事務手続きにかかる期間が4ヶ月と長すぎることも、課題の一つに挙げられるのではないか。

P.4〜5「2.現在の助成事業の審査・評価等に係る現状と課題」
ここで示されている箇条書き11項目の課題に加えて次の点について指摘したい。振興会が実施する助成事業は、閣議決定される「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(以下「基本的方針」)を踏まえているべきだと考えている。しかし、第1次基本的方針から現行の第3次に至るまで、第1次と第2次のそれぞれ中期的な施策で、助成事業にどのような成果があったのか、その評価、検証、説明が十分されていない。おおむね5年間を見通して策定される基本的な方針に沿った形で、助成事業としての5年間程度の中期的な戦略目標を提示し、それに沿った助成対象活動の募集や助成金交付の基本方針を決定が行われるべきである。

P.5「3.新たな審査・評価等の仕組みの在り方について」
「第3次基本方針を踏まえ、文化芸術活動への助成に係る計画、実行、検証、改善サイクルを確立するため、振興会が行う審査、事後評価、調査研究等の機能を大幅に強化する必要がある」とあるが、「助成に係る計画、実行、検証、改善サイクル」は、単年度サイクルで行うものと5年間程度の中期的サイクルで行うものを並行し、近視眼的な審査や評価に偏らず、中長期の文化芸術環境の変化に目を向けるべきだと考える。

P.5「3.新たな審査・評価等の仕組みの在り方について」
「第3次基本方針を踏まえ、文化芸術活動への助成に係る計画、実行、検証、改善サイクルを確立するため、振興会が行う審査、事後評価、調査研究等の機能を大幅に強化する必要がある」とあるが、機能強化とともに、振興会の事務作業の合理化や審査のスピードアップも図られるべきだと考える。これまでの審査にかかる「運営委員会」「部会」「専門委員会」という3層構造を、PD及びPOの配置によって合理化し、「部会」を廃止することも可能ではないか。

P.5「3.新たな審査・評価等の仕組みの在り方について」
「現地調査等においてPD及びPOをサポートする調査員を活用することが必要」とあるが、先の課題に挙げられている「審査委員の目に触れることが少ない設立間もない団体や地域の団体が不利になる可能性」を緩和させるためには、PD、PO、調査員が、中長期にわたって助成対象分野の地域の文化芸術環境について熟知している必要がある。PD、POの役割の代行が可能な地方を活動拠点とする芸術文化機関(中間支援的な役割を持つ公益法人やアートNPO等)と再助成制度(リグラント)の協約を締結することも、審査・評価等の仕組みの在り方として検討されたい。

P.5「3.新たな審査・評価等の仕組みの在り方について」
「平成23年度において音楽及び舞踊の2分野において新たな審査・評価等の仕組みを試行する」とあるが、音楽及び舞踊の2分野を先行して試行する理由が述べられていない。また、音楽及び舞踊以外の分野の制度の導入の可能性や導入時期については、どのような見解なのか。

P.6「(ⅰ)審査基準の作成」
「審査における公正性が更に確保されるよう、PD及びPOの専門的な知識や経験を生かし、助成の基本方針を踏まえた審査基準を作成」とあるが、ここでの「審査基準」について具体的に例示して説明していただきたい。また、この「審査基準」は、翌年度以降も毎年作成されるものと考えてよいか。

P.6「(ⅲ)部会 」
「部会においては、専門委員会における指摘事項、その他PD及びPOからの助言等を踏まえ、助成対象活動の審議、助成金額の審議、分野間の調整等を行う」とあるが、これまでの審査にかかる「運営委員会」「部会」「専門委員会」という3層構造を、PD及びPOの配置によって合理化し、「部会」を廃止することも可能ではないか。

P.7「③審査結果の公表等 」
「不採択となった助成対象活動を応募した団体が、今後の活動を行うに当たり、事業の改善や見直しを行うための参考となるよう、原則として、当該団体に対し、当該不採択理由を伝えることが必要であり、その方策を検討する」とあるが、不採択理由に対して不服のある団体の意見の聴取や、不服とする意見に対してPD、PO、専門委員会が回答を行うことも検討されたい。

P.8「⑤調査研究の充実 」
「助成対象分野や関係する文化芸術団体等に関する調査研究を充実させることが必要」とあるが、P.13「平成23年度における審査・評価等のスケジュールとPD及びPOの職務(イメージ) 」に示されている「事業の実績等の調査分析」は8〜9月と2ヶ月程度しか調査分析の期間が見込まれていない。この調査分析ではどのような内容・手法を想定しているのか。次年度以後の助成の計画と実行を適切に行うためにも、この調査分析は丁寧に行うべきだと考える。

P.8「⑤調査研究の充実 」
「調査研究については、文化芸術団体に関する実績、受賞歴及び財務状況、助成対象分野に関する我が国及び諸外国の動向について情報を収集及び分析する」とあるが、財務状況については、文化芸術団体が自ら助成事業にかかる会計の透明度を向上させることが肝要である。助成金の不正な取り扱いに対して厳しくチェックするだけでなく、PD、POが文化芸術団体に対して、会計の透明度を高めることが人々の信頼を得るために必要だということを啓発していく必要がある。

P.9「⑤調査研究の充実 」
「現地調査については、PD及びPOだけですべての公演を調査することは困難であることから、調査を行う際には必要に応じてPOの下に調査員を配置し、調査員も活用してなるべく多くの公演に赴き、助成対象活動の進捗状況の把握等に努める」とあるが、PD、POの役割の代行が可能な地方を活動拠点とする芸術文化機関(中間支援的な役割を持つ公益法人やアートNPO等)に調査研究を委嘱することも検討されたい。

P.8〜9「⑤調査研究の充実 」
ここで示されている箇条書き5項目から、調査研究の切り口としては、助成対象分野(主に音楽、演劇、舞踊といった芸術文化の分野)を軸としていることが想定される。こうした助成対象分野ごとの調査研究によって、例えば地域別(北海道、東北、関東…)や、人材別(創作家、実演家、技術者、マネジメント…)などの課題が見落とされることのないように、異なる助成対象分野を横断的に調査研究、分析することが重要である。

P.12「5.将来における審査・評価等の仕組みの在り方について」
「PD及びPOの配置に当たっては、PD及びPOがその機能及び役割を更に発揮することができるよう、PD及びPOを常勤職員として振興会に配置していくこととともに、分野ごとにPD及びPOを増員することが望まれる」とあるが、その前頁(P.11)には「PD及びPOという職が、文化芸術分野におけるキャリアパスとして位置づけられることが望まれる」とある。PD、POをキャリアパスとして位置づけるのであれば、常勤職員としての立場は有期の雇用契約になるのか。有期の場合、PD、POの任期の長さは何年程度か。

P.13「平成23年度における審査・評価等のスケジュールとPD及びPOの職務(イメージ) 」
平成23年11月中旬に「募集締め切り」、平成24年3月下旬に「助成対象活動及び事後評価の評価基準の公表」とあるが、これまでの審査にかかる「運営委員会」「部会」「専門委員会」という3層構造を、PD及びPOの配置によって合理化し、「部会」を廃止することで、申請の締め切りから助成対象活動の公表までのスケジュールを短縮できないか。

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