12.08.2010

文化多様性と民主主義

生物多様性の問題から学ぶ文化多様性の必要性について、もう一つ。朝日新聞のThe Globeの12月8日「作物多様性の保全は、人類の未来を救う」、筆者はグローバル作物多様性トラスト事務局長のカリー・ファウラー氏。
過去にどのくらいの品種が失われたのか、正確な数字はもっていない。ただ、間違いないのは、多様性が失われるにしたがって農業や食生活が脆弱になりつつあるということだ。
たとえば、1800年代の米国には7200種類のリンゴがあった。今日までに、そのうちの6800種類が消えてしまった。おいしいリンゴ、料理に使いやすいリンゴ、害虫に強いリンゴ……。さまざまな特性をもったリンゴが消えてしまったに違いない。
なぜ、そんなことが起きたのか?
人口が増えると多くの食糧が必要になる。農家は、より生産性の高い品種を育てなければならない。そこで植物育種業者は、在来の品種の中から栄養価の高い品種や病気に強い品種などを選び、それらをかけ合わせて新たな品種をつくる。そういう品種改良された作物を多くの農家が栽培するようになり、やがて在来の品種が消えていく。
「だったら、すぐれた品種だけを保存しておけばいいじゃない」。そんな意見もあるだろう。 しかし、気候変動や未知の害虫に立ち向かうために新たな品種をつくろうとする場合、できるだけ多くの在来品種を残しておかないと、うまく品種改良ができなくなる。
引用した文章の冒頭、「間違いないのは、多様性が失われるにしたがって農業や食生活が脆弱になりつつあるということだ」という文章で、「農業や食生活」という言葉を「民主主義」に置き換えて読めば、それが文化多様性の問題の本質だと私は思います。

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