11.06.2010

首都圏某市で指定管理者の選定に関わったこと

さきらの指定管理者の選定について、自分自身が考えるために、また、関心のある方と情報を共有するために、ちょっと突っ込んだことを書かせていただきます。
公共ホールにおける指定管理者制度については、大まかに賛成とか反対ということが言われます。が、地方自治法では、指定管理者に「公の施設の管理を行わせることができる」と書いてあり、指定管理者制度の運用は地方公共団体が判断し、その具体的な摘要施設や選定に至る制度設計を行うわけです。ですから私は、公共ホールにおける指定管理者制度に賛否を唱えるのではなく、もし問題があるとすれば、指定管理者制度を運用する地方公共団体の文化政策に問題がある、と思う立場です。
実は私は、今年の初夏頃、首都圏の某市の公共ホールの指定管理者の選定委員を務めさせていただきました。その公募・選定の経緯と、それを通じて私が感じた所感を書きます。文責は私にあります。いかなる団体を代表する意見でも、実際の私が関わった選定委員会を代表する意見でもありません。もし内容に問題があればすぐ削除します。
私は、某市での文化政策に対する姿勢は一定の評価をしています。また、公共ホールに対する指定管理者制度の運用は、とても丁寧な運用だったと感じています。事務局(公共ホールの市側の所轄担当部課)の努力を高く評価したいと思っています。
まず某市は、指定管理者の選定以前に「文化振興基本方針」を策定していました。また指定管理者を公募する公共ホールの、公募前の指定管理者に対して「指定管理者業務評価」を行っていました。つまり、これから指定管理者を公募する公共ホールについて、設置主体である市は、どのような文化振興に対する理念と方針を持っているのか、ということを明確にし、指定管理業務の状態をモニタリングし、何を評価して何を課題としているかを報告していました。そうした資料は、指定管理者に応募団体だけでなく選定委員にも、欠かすことができないと思いました。
次に、某市での指定管理者の選定委員の構成ですが、文化政策・アーツマネジメントの学識経験者が2名(私を含む)と行政幹部が3名というバランスでした。私は、そこに公募市民が参加してもいいのではないかとも感じましたが、参加しない方がいいという見方も理解はできます。その一方で、文化・芸術方面の学識経験者が選定に関わっていることは重要だと感じました。行政幹部の方々に、体育施設や公設駐車場などの指定管理者と同じ考え方を文化施設に適用することが、どのような点で難しいのかを理解してもらうことや、文化政策に関する動向、例えば劇場法(仮称)についても、事務局を含めて、行政内部の職員では情報を持っていませんでした。それを考えると、文化・芸術方面の学識経験者が選定に関わる責任は大きいと思いました。
それから、提案の選定にかかる選定基準項目と、その配点についてかなり議論し、事務局案の修正もしました。これは、提案の審査そのものと同じくらい重要な作業でした。というのも、何を選定の基準として、それが全体のどのくらいの配点にするのかということは、そのまま、公共ホールの設置主体である市の文化振興基本方針と施策上のプライオリティを反映するものになるからです。また、提案の採点の結果が僅差であればあるほど、その選定基準と配点が大きく左右することになるわけですから、慎重に議論しました。実際、私が関わった選定作業での採点結果も非常に僅差でしたが、選定委員で議論した選定基準と配点だから、結果としてこの指定管理者が選ばれたことには異論を持たないし、異論を持つ人に対して説明可能だと私は思いました。
それで、応募のあった提案書を読み、公開プレゼンテーションでの審査をしたわけですが、想像していた以上に難しいと思ったのは、現行の指定管理者の継続提案と、新規の応募者の提案を、公正な目線で比較することが難しいと感じました。つまり、現行の指定管理者は、これまでの実績や経験から大きく逸脱するような提案はできないけれども、新規の応募者は、他施設での経験はあるにせよ、今回応募している施設の管理運営の経験はないので、その提案内容が実現可能なのかどうかの見極めが難しい。簡単に言うと「ふくらませて提案したもの勝ち」にならないように、シビアに見極めなければならない。仮にそうした提案が採択された場合、どのようにモニタリングし、もし実現していない場合にはどのように改善させるのか、ということも考えなければならないと思いました。
私が関わった指定管理者の公募・選定では、以上のようなプロセスと所感を持ちました。さきらでの指定管理者の公募・選定がどのようなものだったのでしょうか。もし、何かお気づきの点や意見があれば、ぜひともコメントをいただければと思います。

2 件のコメント:

ネット素浪人 さんのコメント...

所轄担当課(事務局)の聴く姿勢が出来ていないと、指定管理者制度はサービスを崩壊させる恐れが大きくあるという恐怖をおぼえました。R市の職員は、某市の職員のように聴く姿勢がまったく出来ていないので、文化政策、子育て政策が早晩崩壊することを予見させられます。

大澤寅雄 Torao Ohsawa さんのコメント...

コメントありがとうございます。
「聴く姿勢がまったく出来ていない」というのは、どうしたものでしょうかね・・・市議会も期待できない?だろうなあ・・・

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