11.28.2008

顔と顔コラム (3) 地域にとってのアートの役割

(「顔と顔カフェ」の詳細→http://natsukote-info.blogspot.com
藤野に引っ越す前は横浜に住んでいたんですが、手塚夏子は、初めて出会う人から「お仕事は何かされているんですか?」と聞かれたら、基本的には「いえ、家事と子育てをしています」と答えていました。たまに、打ち解けた関係の人に「実はダンスをやってます」というと、たいがい少し驚いた表情で「え?どんなダンス?フラダンス?ジャズダンス?社交ダンス?」と聞かれて、そこからの説明が、厄介になるというパターン。それでもたまに、「ああ、コンテンポラリーダンスって、こないだテレビに出てたコンドルズってのを見たことあるけど、ああいうの?」と聞かれて、心の中では、いやー全然違うんだけどなぁ・・・と思いつつ「・・・えぇ、まぁ
そんな感じです・・・」なんて答えたりして、とてもコンドルズさんに失礼な話になったりしています。
ところが、藤野に引っ越してしばらくすると、初めて出会う人の身の回りに、何らかの芸術活動をしている人が多い。なので、ダンスをやっていることを打ち明けても、おおむね「あ、そうなの。そういやぁ知り合いの○○さんは音楽やってるよ」というような反応が多いのです。もちろん「ダンスってどんなダンス?」と聞かれることもあるんですが、それなりに答えると、相手は心の中で「やれやれ、また変な人が引っ越して来ちゃったなぁ」と思っているフシがある。けれども、特別扱いも排除もしない、という反応なので、べつに悪い気はしないのです。なので、藤野に来てから手塚夏子は「ダンスをやってます」ということを、あまりためらわずに言うようになりました。
藤野には、アーティストだけでなく、ちょっと変わった活動をしている人が多くて、「顔と顔カフェ」の主催の藤野コミュニティアーツのメンバーは、パーマカルチャーという農業手法を実践していたり、ベビーマッサージを施したりして、ちょっと珍しい人たちです。それに、この数年に藤野に引っ越してきて、同じ保育園に子供が通っています。アーティストやアートファンではない地域の人々と、アートの役割やアートを介したコミュニケーションについて考えることは、アーティストが作品を創ることとは、まったく別の行為です。アーティストは作品を創ることが使命だから、そんなことはしなくてもいいという考え方も、あるかもしれません。私はその
考え方を、否定はしません。
ただ、アーティストも地域で生活する市民の一人であることからは抜け出せないわけです。農家が畑で作物を作るのに、自分の畑のことだけじゃなくて、地域の自然環境や農作物と人間の関係を考えることが求められているとしたら、同じことはアーティストにも言えるんじゃないか、という気がしています。

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