10.07.2008

ジェコとアジェンの藤野滞在記録 (8)

早いもので、ジェコとアジェンが藤野から大阪に移動してから一週間が経ちました。この一週間、いろいろと遅れていた仕事を片付けるのに追われて、ジェコたちと過ごした日曜のことが書けないままでした。
藤野滞在の最後の日、私たちは温泉に行きました。二人とも温泉は初めての体験で、アジェンは
「ハダカになるの?屋外にもあるの?水着は着ちゃいけないの?」
と私に質問しました。やっぱり抵抗感があるんだったらムリに誘わない方がいいかなぁと思ったんですが、最後に彼女は、ためらいがちに聞きました。
「・・・男と女が入る場所は、分かれているの?」
あ、ごめんごめん、それを説明してなかった。大丈夫、男女別。それを聞いてアジェンは安心したみたい。
温泉で、ジェコとヤスさんと私は、ずいぶん長く露天風呂で話をしました。湯に身体を沈めると、カラダを硬くして身動きしないジェコ。
「・・・動くと、熱い湯が皮膚を刺激して痛いから、じっとしなくちゃいけないし、湯から外に出たら、寒くて動きたくなるし。こりゃ健康にいいかもしれない。もし俺が金持ちになったら、パプアにもこんな温泉をつくりたいねぇ・・・」
と、笑いながら話しました。それから、ジェコは真面目な顔で語り続けました。
「藤野に来てから、自分の将来の夢をずっと考えてたんだ。日本のダンサーとインドネシアのダンサーが、お互いに相手の住む場所に一ヶ月くらい滞在して、その土地の文化や伝統を教わる。それから、東京かジャカルタで出会って、一緒に作品を作るんだ。どうだ、面白いと思わないか」
とジェコ。そりゃいいねぇ、面白そうだ、とヤスさんと私。ジェコは続けて言いました。
「日本とパプアは、だいたい同じ経度に位置しているんだ。だから、毎日同じ時刻に太陽が昇って、同じ時刻に太陽が沈む。パプアでは、太陽を神様として祀っている。日本もそうだろう?だから、たぶん俺たちは一本の線で繋がっているんだ」
ジェコは露天風呂の中で、そう話しました。うまく言えないけど、ジェコらしい、グローバルなアイデアだなぁと思いました。

東京の森下スタジオで、私がジェコたちのダンス作品を見たときに、彼らの生身の身体が、あまりにも自分とは違うということに驚いた日から10日間くらい。寝食を共にして、語りあって、風呂に入って・・・そして目の前にジェコの身体がある。それは、もちろん私の身体とは違うけれども、何か特別に違っているワケではなく、ヤスさんと私の身体が違うように、ジェコと私の身体は違う、ということに気が付きました。

翌日、先週の月曜の朝に、ジェコたちを藤野から新横浜まで見送りに行きました。新横浜の新幹線の改札で、二人と抱き合って、手を振りました。ジェコは
「俺たちの夢を、忘れるなよ」
と言って、いくつもの重い荷物を抱えてホームまでの階段を上りました。「俺たち」って、いつの間にか私も彼の夢の担ぎ手になっているのか・・・まぁ、それも面白そうだ。

というわけで、ジェコとアジェンの藤野滞在記録は終了です。Dance Asiaの後藤美紀子さん、横堀ふみさん、武藤大祐さん、貴重な出会いを与えていただき、ありがとうございました。あと、藤野在住の親友、ヤスさんとヒトミさんとハルトくんにも大感謝。ヤスさんとヒトミさんにも、ジェコたちとの出会いが大きな刺激になっていれば、この上ない喜びです。

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