4.24.2008

映画「民族の祭典」を観て

レニ・リーフェンシュタール監督の映画「民族の祭典」をDVDで観ました。1936年のベルリンオリンピックの記録映画であるこの作品は、ナチスのプロパガンダ映画だという批判もある一方で、作品として映像の美しさも高く評価されています。
私の率直な感想は、映画として、とても楽しめる作品だと思いました。ひとり一人の選手の体、動き、表情がとても豊かで、声援を送る観客も、心から競技を楽しんでいるように見えます。画面の中に映されるヒトラーも、ドイツの選手が勝つ瞬間の笑顔は、ほかの誰とも変わらない笑顔なんです。
プロパガンダと言われる要素も、確かにあるような気はします。開会式、スタジアムの観衆全員が右腕を斜めに上げて起立し、ドイツ人が表彰台に上がるとナチスの鉤十字の旗が掲揚され、同盟国である日本の競技での活躍でも、注目を引く演出が多い気もします。
それでも、スタンドではアメリカ、イギリス、フランスの旗を振って、立ち上がって声援を送っている人もいます。何というか、国際政治の険悪な空気というのは、イメージしたほど伝わらないんです。
これが、戦争が起きる2年前のオリンピックなのか?と。だとしたら、いま、私たちが迎えようとしているオリンピックの方が、よっぽどキナクサイ臭いが漂っているんじゃないか。
そう思って、この映画をプロパガンダとする批判について改めて考えたとき、プロパガンダとは、政治的な問題を目に見える形で取り上げるよりも、政治的な問題などまるでないかのように平和を装うことも、プロパガンダと言えるんじゃないか、と思ったわけです。
ただ私は、レニ・リーフェンシュタールが、「平和を装う」といった、政治的な器用さを持っていたとは思えないのです。彼女は、ただ、美しい映画が撮りたかったんだろうなぁ、と。この映画の価値は、そこにあると思います。
そしていま、私は、映画「靖国 YASUKUNI」が一般に公開されることを、願っています。

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