「靖国 YASUKUNI」というドキュメンタリー映画が、物議を醸し出しているそうです。3月13日のmsn.産経ニュースは、「映画『靖国』に文化庁系独法が750万円助成 自民党から異論噴出 助成金の見直しも」という見出しで、産経ニュースらしく、この問題を詳しく取り上げています。
その後、3月12日のasahi.comでは「国会議員が検証求めた『靖国』試写に80人 反応様々」とあります。おもしろいのは、自民党の稲田朋美議員は「靖国神社が、侵略戦争に国民を駆り立てる装置だったというイデオロギー的メッセージを感じた」と語り、民主党の横光克彦衆院議員は「戦争の悲惨さを考えさせる映画だが、むしろ靖国賛美6割、批判4割という印象を受けた」と話しているところ。そして、時事通信が3月18日に伝えるところによると、「映画『靖国』上映を一館が取りやめ」とあります。
3月19日のSANSPO.COMで、「文化庁側の助成を問題視している自民党の稲田朋美衆院議員(49)の事務所は『助成は問題視しているが上映自体を問題にしているわけではないので、コメントはない』とした」とあります。
芸術と政治の関わり方について興味深い問題ですが、稲田議員のコメントで「助成」は問題視しているが、「上映」は問題にしているわけではないという見方が、ある面、問題をクリアにしているとも思います。助成したのは、独立行政法人芸術文化振興基金で、「芸術文化振興基金助成金交付の基本方針」には、「基金による助成は,芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動,その他文化に関する団体が行う文化の振興及び普及を図るための活動を対象とする。ただし,政治的,宗教的宣伝意図を有するものは除く」とあります。この、「政治的,宗教的宣伝意図」を有するかどうかが、助成を問題視するポイントのようです(監督が中国人ということも問題視する人もいるようですが…)。
しかし、「靖国 YASUKUNI」が助成を受けた「映画の制作活動:記録映画」という枠の助成実績をざっと見ると、タイトルだけで判断はできないものの、そもそもドキュメンタリー映画って「政治的,宗教的宣伝意図」がないと言い切れるのか?と素朴に思うんですよね。逆に言えば、「政治的,宗教的宣伝意図」を読み取ろうと思えば、いかようにでも読み取れると思うんです(もしかしたら、芸術全般にも)。
芸術作品について「政治的,宗教的宣伝意図」を過度に捉えると、芸術と政治の関わり方は、健全ではなくなるような気がします。今回の問題は、退廃芸術についても思い出しました。
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