12.06.2011

劇場,音楽堂等の制度的な…(略)…のパブコメ

最近、Facebookばかりでブログを更新してなかったのですが、本日が締め切りの「劇場,音楽堂等の制度的な在り方に関する中間まとめ(案)」に関するパブコメを出したので、不遜ではありますが、公開させていただきます。なお、あくまでも個人の意見であって、いかなる団体や組織を代表する意見ではありません。
  • 全体を通しての意見①
    p.2(2. 基本的考え方、今後の劇場、音楽堂の在り方)に「我が国の文化芸術の水準が高まるようにしなければならない」という文章以降、「水準」という文言が頻出していますが、その「水準」とは何を意味するのかが伝わりにくいと感じます。
    「水準」が現れる文脈の多くで「国際的に比肩しうる」とあります。その文脈でp.5の「(2) 基本的施策」では具体的に「新国立劇場」が挙げられていますが、例えば新国立劇場を「国際的に比肩しうる」水準として考えるとすれば、どのような実績や指標で測られるのか。一方、p.6の「②地域の文化芸術活動の活性化」では「地域の文化芸術活動を活性化することによって、我が国の文化芸術の水準を高める」とあります。これは、前述の「国際的に比肩しうる」という意味での水準とは異なるように思います。
    また「水準」という言葉には、「高い・低い」という垂直的なヒエラルキーが含まれるように感じます。それは自ずと「トップレベル」という文言にも繋がり、その印象として、「国=高水準・トップレベル」に対して「地方=低水準・裾野」という、中央集権的なピラミッド構造の文化政策の考え方には、違和感を感じます。
    文化芸術振興基本法の第二条(基本理念)の第5項「文化芸術の振興に当たっては、多様な文化芸術の保護及び発展が図らなければならない」とあり、ユネスコの文化多様性条約や平成16年の文化審議会文化政策部会「文化多様性に関する基本的な考え方について」を鑑みても、本中間まとめにおいては、文化の多様性の確保よりも、水準を高めるという姿勢が強調されているように感じます。
    以上について、より一層の検討や検証が望まれます。
  • 全体を通しての意見②
    p.1「劇場,音楽堂とは,もっぱら音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等の文化芸術活動を行い」とあるように、文化芸術の分野としては音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等を対象としています。無形文化財が対象外となっている(もしくは「等」に含まれる)ことは、従来の文化行政の枠組みを前提としている以上は修正が困難であることは予想できますが、劇場・音楽堂には、国立劇場おきなわをはじめとして、無形文化財の公演、公開、普及啓発、人材育成、調査研究等に資するものも数多くあります。よって、劇場・音楽堂の制度的な在り方における無形文化財の位置づけについても検討が必要と考えます。
  • p.3「3. 検討対象」の「地域」
    「地域によっては,公立の劇場,音楽堂等がなく,音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等の文化芸術活動が,民間事業者が設置又は運営する劇場,音楽堂等において行われている場合がある」とあります。ここでの「地域」として想定する範囲が、道州レベルなのか、都道府県レベルなのか、市町村レベルなのかによって、検討対象の性格や数が大きく変わるため、より具体的な検討と説明が必要だと考えます。
  • p.4「(1) 総論 ① 劇場,音楽堂等の機能を生かした文化芸術の振興に関する国及び地方公共団体の責務について」
    箇条書きの3点目の「地方公共団体の責務は,自主的かつ主体的に,その地域の特性に応じた音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等の文化芸術に関する施策を策定し,当該地方公共団体の区域内における劇場,音楽堂等を有効に利用し,必要に応じて,国や他の地方公共団体等との連携を図りつつ,実施することである」とありますが、「国や他の地方公共団体等との連携を図りつつ」という部分に「市民」あるいは「地域の人々」という言葉が「国」よりも前に置かれる必要があると考えます。
  • p.4「(1) 総論 ② 劇場,音楽堂等を設置又は運営する民間事業者の役割」
    ここでの「民間事業者」は、自らが劇場・音楽堂を設置・運営する民間事業者だけでなく、地方公共団体が設置した劇場・音楽堂を、指定管理者制度で運営する民間事業者も含まれていると考えますが、地方公共団体が設立し資金を拠出している法人(公立文化施設を運営する文化振興財団など)は、この「民間事業者」に含まれると考えてよいでしょうか。あるいは、前項①の「地方公共団体」に含まれているのでしょうか。
  • p.5 「(2) 基本的施策 ① 我が国の文化芸術の水準を高めるトップレベルの活動の支援等」
    「国は,我が国の文化芸術の水準を高め,国際的に比肩しうる水準の文化芸術の振興を図るため,引き続き,新国立劇場を十分活用し,創造発信活動等を行うとともに,地方公共団体,民間事業者,文化芸術団体等と連携協力し,これと同程度の水準の文化芸術を提供することができる劇場,音楽堂等を拠点として,トップレベルの創造活動等が全国的に展開されるよう支援する必要がある」とありますが、新国立劇場と「同程度の水準の文化芸術を提供することができる劇場,音楽堂等」というのは、何を同程度の水準とするのか(施設の規模や舞台設備なのか、その施設や事業運営を行う組織体制や人材なのか)、説明が必要に感じました。
    また、「トップレベルの創造活動等が全国的に展開されるよう」国が支援することが、地域に根差した文化芸術の創造に繋がるとは限らない(東京を拠点とする団体の地方巡業を補助する仕組みでしかない)とも考えられるため、どのようにすれば、国の支援が地域に根差した文化芸術の創造に繋がるのか、検討が必要だと考えます。
  • p.7「5. 劇場,音楽堂等の運営に係る留意事項等 (3) 指定管理者制度の運用」
    劇場・音楽堂において、指定管理者制度の運用は非常に大きな課題だと考えます。また、劇場・音楽堂の制度的な在り方が検討される契機でもあったと認識しています。
    しかし、本中間まとめでは、指定管理者制度の運用が「留意事項」として「法的基盤の内容として考えられる事項以外」に位置付けられており、劇場・音楽堂の現場の切実な状況やこれまでの議論の経緯を考えると、消極的な姿勢のように印象を持ちます。
    「制度的な在り方」としては「現実的」ではあるかもしれませんが、p.3「4. 法的基盤の内容として考えられる事項」にもある「設置者の判断のもと」という前提を越えられない(例えば首長や議会が劇場・音楽堂の意義を意に介さない場合、この制度の意義も通用しない)とすれば、法的基盤として整備する根拠自体が弱いようにも感じます。
    地方自治法・公の施設の指定管理者制度の例外規定的な位置付けが可能となるような根拠となり、実効力のある制度の在り方を検討することが望ましいと考えます。
これだけ意見を書いたわけですが、私は、まだ「劇場法」に賛成か反対かを問われても、よくわからない、というのが正直なところです。ただ、法律という形になるかどうかは結果であって、それまでの議論を尽くすことが重要だと思っています。
いつもパブコメを出すときに難しいと思うんですが、できるだけ建設的に書こうと思っていても、どうしても非難や否定めいたニュアンスが出てしまうなぁ…反省。

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